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今日は 2020年11月30日です。
◆オーバーフローに注目
前々回の記事「温浴槽をサウナに変更すると」(2020年11月27日執筆)で書いたように、ろ過循環式の浴槽であっても膨大な量の湯が消費されているのですが、その半分以上がオーバーフローによって排水され、残り3〜4割くらいが逆洗水と湯抜き清掃時の換水となっていることが一般的ではないかと思われます。
かつてはオーバーフローの湯を回収して再びろ過循環に回す方式が認められていたのですが、レジオネラ菌問題に対する安全対策として、現在は新規施設に対してオーバーフロー回収方式の設備は認められていません。
湯を贅沢に溢れさせているように見える浴槽は、源泉温度と排水環境に恵まれた源泉かけ流しの施設か、濾過循環+オーバーフロー回収という規制強化以前に作られた旧式設備が残る温浴施設に限られるのです。
オーバーフローした湯を回収できなくなったことによって何が起きたかというと、冒頭に書いたように膨大な量の排湯によって水光熱費(燃料代+下水道代)が跳ね上がってしまい、ますます温浴施設の経営が難しくなりました。
燃料や下水道の請求書を見て驚いた温浴施設は、慌てて満水位を下げてオーバーフローしにくいように調整します。すると今度は水質悪化という問題が待ち構えています。かく言う私自身もそれで「水が汚い」とお客さまに叱られた苦い経験があります。
湯だけでなく水風呂も同様なのですが、浴槽水の汚れには「浮く」「漂う」「沈む」「溶け込む」という4種類があります。
オーバーフローで除去できるのは「浮く」汚れだけですが、その浮いている汚れを早く処理しないと、いずれ漂い、沈み、溶け込んでいくことになります。逆に言うと、浮いている汚れをしっかり除去できていれば、浴槽水はかなり汚れにくくなるのです。
したがって、水光熱費と衛生のバランスを取りながら、適切にオーバーフローさせるという絶妙なコントロールが求められます。
前々回記事に書いた仮の計算条件で言うと、浴槽面積10平米=6t、男女で12tの浴槽からオーバーフローする湯の量は月間252t。
1tあたりの排湯に500円のコスト(燃料代+下水道代)がかかっているとすると、オーバーフロー量がほんの1割(25.2t)変動しただけで、月間12,600円の違いになります。
スーパー銭湯や健康ランドなどの大型浴室を持つ温浴施設では、百tを超えるような浴槽容量で、月間排水量が何千tという施設がざらにありますから、もっと大きなコストになってきます。
浴槽からあふれる湯の量が1割変動しても誰も気づけないレベルの違いだと思いますが、そのオーバーフローの影響の大きさを見落としながら、いくらアメニティの品質やマット交換の回数をケチってコストを浮かそうとしても、温浴施設の経営は決してうまく行きません。
風呂屋なのですから、まずはお風呂の品質管理のプロフェッショナルでなければならないのです。
ちなみに、私が自宅で入浴する時は、シャワーヘッドを浴槽に入れてわざと湯をあふれさせることがあるのですが、浴槽からあふれる湯の動きを見ていると、湯面の流れが驚くほど速いことに気づきます。あふれ始めはそうでもないのですが、しばらくすると流れが加速して、家庭用の小さな浴槽など、ほんの数十秒で湯面が一掃されてしまうのです。
これは読者の皆様もぜひ実験して確かめてみてください。
つまり、常時オーバーフローさせていなくても、タイマー制御で一時的にオーバーフローさせれば、水面の汚れは一掃できるということなのです。
多くの温浴施設の浴槽は、ミリ単位の微妙な満水位制御でオーバーフロー量を調整していると思います。
同時にたくさんの人が入れば…
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