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今日は 2021年12月22日です。
◆環境変化と新業態(1)
親と子の形質は全く同じではく、ささやかな遺伝子の突然変異は常に起きています。それが種としての進化に至るかどうかは環境による自然選択によって決まります。
新しい特徴をもつ突然変異の子どもが出てきたとき、元の種が持っている身体の特徴のほうが環境に適応していれば、生存競争に生き残るのは元の種の方で、突然変異の子どもたちは子孫を残すことなく途絶えてしまいます。逆に突然変異の子どもの方が生存に有利であればそちらが生き残り、子孫を増やす。これが適者生存による種の進化ということです。
したがって、進化が発生しやすいのは、その生き物をとりまく環境が変化した時。
気候の変動、食物の変化、棲みかの移動、周りに今までいなかった天敵が現れた、などの大きな環境変化があると、既存の種が生きにくくなったり、突然変異した子どもが生存する余地が生まれ、種の進化につながる可能性が高まります。
環境があまり変化しなかった孤島などでは、古い種が生き残っていることがあるのはよく知られています。
さて、ここからは温浴ビジネスの話です。一般公衆浴場(銭湯)という業態は、物価統制令と公衆浴場法によって経営環境が人為的に固定化され、種としての変化が起きにくくなりました。しかし自家風呂の普及によって、生活衛生の場としての役割が薄れ、じりじりと勢力を減らし続けています。
一方、一般公衆浴場の枠組みから抜け出した「その他公衆浴場」は、ヘルスセンター(後の健康ランド)、都市型サウナ、スーパー銭湯といった業態へ一気に分かれて柔軟に進化を遂げましたが、その後は比較的大きな変化を見せることなく安定していました。
これは高度経済成長から平成に至るまで、比較的経営環境が安定していたためと言えるでしょう。
しかし、これからは違います。すでに起きていた少子高齢化やIT化といった時代の変化に加えて、コロナ禍という人類史に刻まれる大きな危機にさらされ、温浴ビジネスの経営環境はかつてないほど激しく変動しています。
既存の業態が生きにくくなったり、突然変異種が生存する余地が生まれているのです。
アウトドアサウナ、個室サウナはすでに生存できる新種として、子孫を増やし始めているように見えます。
温浴ビジネスにはキャパシティの制約があるため、面積あたり収益性には上限があります。したがって、同じ限界に近いレベルの施設稼働を目指すなら、不動産コストの安いところでやった方が儲かります。都心部の不動産コストの高い場所でやるのはメリットが薄いのです。不動産活用という視点で考えれば、他の業種の方が高い収益性を期待できそうです。
また既存の温浴業態は小さくても100坪弱、大きければ数千坪もの施設規模になりますので、それだけのまとまった規模の物件は都心ではなかなか確保できません。
さらに東京都の多くの地域では下水道が合流式となっており、排水すべてに下水道料金がかかってしまうという点も大量の水を使う温浴施設が普及しにくい理由のひとつでしょう。
マーケットが大きいのは分かっていても、作ろうとすると様々な面でハードルが高く、都心部では温浴施設が普及しにくい経営環境だったのです。
ところが、不特定多数が自由に利用できるという公衆型の温浴施設ではなく、事前予約制で利用人数を限定しつつ、高単価設定にすることで、規模の制約を突破してきたのが個室サウナです。1室2坪弱でも作れるため、20坪以下の物件でも温浴施設を作れる可能性があるのです。
また、本格的な建築ではなくて小屋やコンテナ、テントなどを利用したアウトドアサウナであれば、初期投資を抑えることが可能です。外気浴の重要性が理解されるようになったことも、チャンスを拡げています。下北沢のCORONA WINTER SAUNAや有明のネイキッドサウナ、六本木のチームラボリコネクトなどが、暫定利用でも都心部で温浴施設ができることを示しました。
そしてサウナがメインの業態であれば、大型の浴槽を複数備える温浴施設ほどには水を使いませんので、水道コストの問題もハードルが下がりました。
アウトドアサウナ、個室サウナが生まれてきた背景には、このような事情があります。
そして、またひとつ新たな突然変異種が生まれています。それは…
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