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今日は 2021年12月20日です。
◆一商圏一社から公開と共有の時代へ
古い話なのですが、間もなく20世紀が終わろうとする1999年に、前職温浴チームで温浴施設経営の研究会組織を立ち上げました。
研究会というのは、毎月東京と大阪の会議室に温浴施設の経営者や支配人が集まって勉強会をするもので、セミナーと違って年会費制で固定メンバーです。
会員同士が顔見知りになり、信頼関係が生まれることで、ディープな情報交換ができるようになります。
当時、研究会メンバーを募集する際に、「一商圏一社」という謳い文句がありました。これは温浴研究会に限ったことではなく、社内にあった他業界の研究会でも同様だったのですが、先行入会している会員と商圏がバッティングする場合は後から入会できない、という意味です。
なぜそのような決め事をしていたのかというと、商圏内で競合する企業同士はお互い内情を知られたくはないだろうし、本音の情報交換ができないだろうということです。そしてそのように先行入会企業を優遇することで、早く入会しないと入れなくなりますよ、と煽る意味もありました。
実際のところ、当時の温浴業界はまだ同一商圏内での競合がそれほど激しくなく、ひとつの商圏に有力な施設はひとつかふたつくらいの地域が多かったので、実際に商圏バッティングで入会をお断りするようなことも起きず、特に問題はなかったのです。
逆に、温浴施設同士がお互いに違うコンセプトを持ち、差別化して棲み分けるということは考えにくい時代でもありました。スーパー銭湯ブーム前夜といったタイミングでしたから、多くの施設が同じ路線を目指していましたので、新しい有益な情報は隠して独占したいという雰囲気がありました。
それから20年以上が経ち、温浴ビジネスも大きく変わりました。2007年をピークに右肩上がりだった市場規模は頭打ちとなり、縮小に転じます。成功モデルだったスーパー銭湯は同質競争で苦戦するようになりました。
2005年にかつてのチームメンバーが書いたメルマガにこんなくだりがあります。
──消費者の立場からみると、身近に温浴施設が豊富にあることは選択肢が増えてうれしいことです。しかし似通った温浴施設ばかりではたちまち飽きてしまいます。飲食店で考えてみれば、ファミレスばかりが何軒も乱立しているよりも、ファーストフードから行きつけの居酒屋、たまには行きたい高級レストランまで、また業種も和食から中華、イタリアンetc.とバラエティーに富んでいないと飽きてしまいますよね。温浴施設も同様ではないでしょうか。
温浴施設は競合が厳しくなっていると思われがちですが、見方を変えてみると、価格や施設構成が同じような施設が増えてきているだけなのかもしれません。もっとグレードやコンセプトを変えて棲み分ければ、異なったターゲットを望めるのではないでしょうか。お客さまはまだまだ幅広いニーズを持っているように思います。
飲食店に様々な国籍の料理があるように、今後はもっと海外のいろいろな温浴設備やヒーリングサービスが取り入れられていくと思います。日本は海外の文化を取り入れやすい文化特性を持っているので、今後の温浴サービスにもそのような傾向が現れるのではないかとひそかに思いをめぐらしているところです。──
16年も前に書かれた文章ですが、慧眼だと思います。いまやハッキリと分かりますが、温浴施設同士が同じマーケットを奪い合うような競合をしている場合ではないのです。うかうかしていると、消費者の可処分所得と可処分時間はどんどん他で使われてしまいます。
温浴ビジネス全体がさらに価値を高め、温浴ファンを増やすということが最も大切なのです。消費者は、「時にはファミレス、時には高級レストラン」というように使い分けて複数の施設を行き来しますが、それは自然なことなのです。
弊社としても、アクトパスクラブや顧問契約において、商圏バッティングはそれほど気にしておりません。もちろん守秘義務は厳守しますが、それはコンサルティングビジネスの基本としてわきまえております。
これからは双方ご納得の上で、商圏の重なる近隣施設同士でもどんどんお付き合いして欲しいのです。
情報交換すれば、お互いの成長スピードがさらに早まります。
合同イベント企画やスタッフ交流などを行っていくことで、地域の温浴マーケット全体が活発化していけば、お互いに大きなメリットになるでしょう。
お互いをよく知れば、自社との違いが分かり、効果的な差別化や棲み分けの方法も見えてきます。
隠蔽・独占で儲かった時代は過ぎ去り、公開・共有の時代なのです。
(望月)