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今日は 2020年7月27日です。
◆公衆浴場の公衆とは?
お付き合い先の温浴施設の社長から電話をいただきました。
「周りの公共温泉施設が、揃って首都圏や北海道から来た利用者の入館をお断りしている。自店だけがまだ通常営業しているが、地元からの批判を考えると制限すべきなのか、判断が難しい…」とのこと。
たしかに、GoToキャンペーンについては賛否両論あり、様々な立場によって異なる受け止め方となっています。東京都など感染が拡大されているとされる地域からの広域観光客の受け入れについては消極的な地域も多いようです。
地域全体がそのような雰囲気の中で、唯一観光客を受け入れている施設があれば目立ってしまいますし、万が一その施設が感染拡大の原因であるというような事態になったら、激しいイメージダウンにつながります。
近隣商圏のリピーターがメインの顧客である温浴施設にとっては、地元を向いた営業方針にならざるを得ないのは心情的に理解できるところです。
実際にその地域の該当する公共温泉のHPを検索してみたところ、北海道と首都圏の方は入館をご遠慮ください、としっかり明記してありました。
メルマガ第1309号「答えは現場にしかない」(2020年7月17日執筆)で、「不振の根本的な原因として最も多いのは経営の意思決定が現場と離れたところで行われているケース(中略)、施設数にして温浴業界の2割を占める公共温浴施設はほとんどがこのパターン」と書きましたが、まさにこのことなのです。
役場の担当の方は、入浴拒否が法的に非常に難しい問題をはらんでいるということを、おそらくご存知なかったのでしょう。
以前、外国人一律入浴拒否は人権侵害だという訴えがあり、温浴施設側が100万円の損害賠償責任を負った札幌地裁の判例があります。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/644/008644_hanrei.pdf
裁判所の判断には、「公衆浴場である限り,希望する者は,国籍,人種を問わず,その利用が認められるべきである。もっとも,公衆浴場といえども,他の利用者に迷惑をかける利用者に対しては,利用を拒否し,退場を求めることが許されるのは当然である。」という文言があります。
つまり、北海道や首都圏に居住する人が地方に旅行して公衆浴場で入浴しようとするのは迷惑行為なのか?という点が争点です。
このような難しい問題をはらんでいるということをあらかじめ知っていたら、安易に新しい入館ルールを追加記載することはできないと思います。
ましてや、公共温浴施設は公的資金を使って建てられ、営業している公共施設なのですから、私人対私人の争いではありません。公共性という点では民間施設以上に配慮が必要になるでしょう。
もし私がこの公共温浴施設の方にアドバイスする立場だったら、
「一律入館拒否はヤバいです。訴えられたらきっと負けます。もし何らかの対策をするなら、『特に感染が拡大している地域からのご利用は、他のお客様に不安を与える可能性がありますので、館内エチケットの徹底、体調不良や発熱があるときは利用を控えるなどの点を一層強くご配慮くださいますよう、お願い申し上げます。』くらいの記載にしておくのが無難です。」
といった玉虫色の対応方法をお伝えすることでしょう。
なかなかスッキリ解決というわけにはいかない難問です。
本音を言えば、政府がきちんと説明を尽くして世論をまとめてからキャンペーンをスタートして欲しかったところですが、誰もが未体験で正解が分からないこのコロナ禍、理屈を言っていても解決にはなりません。
トラブルが起きても政府が責任をとってくれるわけでもありません。
現実を見据えながら、よく考えて自分で答えを出していくしかないのです。
(望月)