計算のできない世界

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今日は 2021年12月18日です。

◆計算のできない世界

 温浴施設の最も堅実なマーケティング戦略は、自店から移動10分圏内に潤沢な人口があり、その近隣商圏からのリピート集客だけで事業を成立させる方法です。

移動10分というのは徒歩だったら1km圏。自動車だったら5km圏くらいの範囲となります。

よく言われる「スーパー銭湯が成立するための必要商圏人口は10万人」という基準は、自動車10分圏に10万人の人口がいるかどうかという意味です。

入浴料に対する1人あたり平均年間消費支出金額が約8,000円とすると、10万人商圏には年間8億円の市場規模がありますから、その中で一番店シェア19%〜26%を獲得すれば、入浴料売上は1.5億円から2億円。

付帯収入を含めれば3億円から4億円の年商となりますから、初期投資5億円から8億円くらいのスーパー銭湯なら着実に短期投資回収できる計算となります。

ところが、そのように人口潤沢なエリアには、それなりに複数の競合店が存在していることが多く、熾烈なシェア争いがありますから、簡単には一番店シェアを獲得させてはくれません。

そうなると、施設規模や設備をさらに充実させて競争に勝てるようなものにする。しかしそのために投資はどんどん膨らみ、競争上優位には立てても投資回収がおぼつかなくなってしまう。

限られた商圏内でシェアを奪い合う戦略に限界を感じて、商圏拡大に目を向ける。

20分、30分、60分と集客エリアを拡げていけばマーケットはありますが、遠くからわざわざ来てもらう施設となるには、それだけの魅力と目的性を持たせる必要がありますから、近隣商圏を対象とするよりも運営の難易度は高くなります。移動時間に比例して滞在時間も伸びますので、食事から休憩まで至れり尽くせりのサービスを提供しなければならなくなります。

そこにも限界を感じるなら、観光マーケットがあります。観光客に立ち寄ってもらうにはそれなりの尖った目的性が必要ですが、滞在時間が移動距離に比例して長くなるわけではないので、運営難易度がそこまで上がるということはありません。経営資源と企画次第では期待が持てる戦略です。

近隣商圏<広域商圏<観光マーケット。ここまでが、温浴施設のマーケティング戦略として計算ができる世界です。市場規模を把握し、そこから集客と売上を予測し、投資との適正なバランスを考えることで、できるだけリスクを排除し、堅実な事業計画に整えるのがコンサルタントの重要な役割だと思っています。

しかし、上記のようなアプローチでは、革命的な温浴施設を生み出すことはできないのです。

1952年にスチームバスセンターを開業したニュージャパンサウナは、その後スパプラザ(サウナとトリートメントをセットにしたワンウェイ業態)、スパグランデ(入館料2万円の高単価業態)といった革命的な温浴業態を作り上げました。

1955年に創業し、ヘルスセンターブームの発端となった総合レジャー施設船橋ヘルスセンターは、ピークには年間400〜500万人もの集客があったといいます。

1966年に創業した常磐ハワイアンセンターは、その後スパリゾートハワイアンズとして最大で年間160万人を集客し、いまも存続しています。

温浴史に刻まれる名施設は…

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