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今日は 2021年11月23日です。
◆温浴学
前号で、ICU国際基督教大学アジア文化研究所が開催するシンポジウム「コロナ禍から考える日本の風呂文化」に参加した感想を書きましたが、先生方のお話には、成果の期待できる結論を急ぎがちなビジネスの世界とは違う凄みを感じました。
風呂文化の歴史や医療に関する丁寧で学術的な考察を聴いていると、もっとこういった研究が進んで欲しいということを痛感します。
コロナ禍で感じていたことを振り返ってみると、
- 浴室は高温多湿なため、空気感染は起こりにくいのではないか
- 90度を超えるサウナ室ではウイルスは不活化するだろう
- 入浴によって免疫機能が向上すると言われるが、どのくらい違うのか
- 毎日しっかり入浴する習慣のある人とそうでない人でコロナ感染状況に差はあるのか
- 世界に類を見ない日本人の入浴習慣が流行拡大を防いだのではないか
- 温泉地で感染拡大がみられないと言われたが、温泉の効能と関係があったのか
- サウナの換気は給排気口と出入り時のドア開閉に頼る自然換気だけでは不十分なのではないか
- 換気の心配がない露天風呂で黙浴をマナーとする意味があるのか
- 休業要請や時短営業の適用はどのような法的、科学的根拠に基づくのか
…等々いろいろなことが言われていましたが、本当のところはどうなのか国内ではほとんど検証されておらず、誰にも分かりません。
古代に隆盛を誇ったローマ風呂は、梅毒やペスト流行の一因と見られて衰退してしまいました。日本でも週刊誌報道をきっかけに始まった岩盤浴バッシングによって、全国2000件もの岩盤浴専門店がほぼ消滅したのは、ほんの15年前の出来事です。
人は科学的な知見に基づくことなく、風評に流されて誤った判断をしてしまう。やることは昔も今もあまり変わっていません。
温浴は、これほど人の生活に密着し、健康と幸福に深く関わる重要文化であるにも関わらず、あらゆることが未解明過ぎると思います。
工学、化学、医学、経営学、民俗学、社会学、法学…様々な分野でもっと専門的な研究が必要ですし、それらを統合した温浴学を確立して欲しいと願わずにはいられません。
世界一の風呂好き民族であり、世界中の情報や技術を吸収しながら発達してきた風呂文化を持つ日本人だからこそできることですし、やらなくてはならないと思うのです。
風呂好きの学者さんが立ち上がってくれる時まで、温浴ビジネスの世界に生きる側としては…
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