ハード先行はもうやめて

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今日は 2021年11月15日です。

◆ハード先行はもうやめて

 築20年の公共温浴施設を市が民間に譲渡する方針を決めたとのニュースを見ました。

以前調査で入浴したことのある施設でした。

有名建築家にが設計し、初期投資に46億円もかけた建築で、膨らむ修繕維持費を負担しきれなくなったそうです。

コロナ前には年間17万人の利用者がいたとのことですが、そのくらいの利用者数の温浴施設なら数億円で建てることができます。

46億円あれば他にも何軒も施設を建てることができたでしょう。

なんともったいない…投じられた公的資金も、優良な泉質も、有名建築家の力を活かすことができなかったのももったいないと哀しくなります。

こういった問題が起きてしまう理由はたったひとつ。事業化プロセスがハード先行になっていることです。

設計に入る前にしっかり市場調査をして、

1.マーケットシェアからの年間売上予測
 ↓
2.入館料設定
 ↓
3.客数予測(売上÷客単価)
 ↓
4.ピーク日客数予測
 ↓
5.平均滞在時間とロッカー回転率設定
 ↓
6.最大収容人数設定
 ↓
7.一人当たり占有面積設定
 ↓
8.延床面積設定
 ↓
9.概算投資額予測
 ↓
10.投資回転率とのバランス調整

という手順で事業方針や設計指針を明確にしてから設計に着手すれば、何十億もの過剰投資をしてしまうことには絶対にならないのです。

もちろん机上の売上予測の精度には限界がありますから、計画どおりの売上が実現しないこともあるでしょう。しかし、アイデアとデザインだけで設計を進めてしまうよりも、現実的な収益性の見込める施設計画になるのは間違いありません。

温浴事業経営や浴室設計の専門知識を持っている設計士は、日本に数えるほどしかいませんので、そこは建築家の責任ではありません

設計に着手する前に事業方針や設計指針を作るのが鉄則であり、その手順をすっ飛ばしたり、建築家のデザイン力で何とかなると期待してしまうことが問題だと思います。

20年前といえば、スーパー銭湯ブーム、公共温浴施設開発ラッシュの時期でした。

その時期だから起きたことで、今はもうそんなことはないのでは?と思われるかもしれませんが、実はいまだにハード先行、売上予測もなしに温浴施設を作ろうとしている計画が後を絶ちません。

弊社にも設計から着工へと進み開業が迫ったところで運営や研修のご相談をいただくことがありますが、正直、もっと早いタイミングで相談していただければ…と思うことも少なくありません。

温浴施設はアート作品ではなく、店舗です。温浴ビジネスは装置産業ではなく、サービス業です。建築や設備が稼いでくれるのではなく、人が人をもてなし続けることで事業が発展するのです。これから温浴施設を新たにつくるのであれば…

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