再び温泉ブームを起こすために(3)

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今日は 2021年11月12日です。

◆再び温泉ブームを起こすために(3)

 いま、日本全国の下水道普及率は80.1%(下水道利用人口/総人口・令和2年度末)となっています。東京都など大都市圏では90%を超えます。

つまり、一般的に人の多いところにはほとんど下水道が整備されているのです。

温浴ビジネスを成立させるためには一定の商圏人口が必要となりますので、そういった場所は下水道整備区域であることが多いわけです。

第1681号「再び温泉ブームを起こすために(2)」(2021年10月27日執筆)で書いたように、かけ流し方式の浴槽で、お湯の温度と鮮度と衛生状態を適切に保とうとすれば水光熱費が膨大になります。

それを躊躇なくできるのは、下水道以外の排水経路があり、源泉の湯量と温度に恵まれているという条件が揃ったところに限られるのです。

それ以外の環境では、現実的には濾過循環方式を選択し、頑張ってかけ流しをするとしても小さな浴槽ひとつだけ、それでも水光熱費負担に苦しむ…といったことになります。

濾過循環方式とした場合、泉質によっては経時劣化や酸化、そして塩素注入による不快な匂いや刺激があります。法令遵守と安全衛生を考えればそうせざるを得ない。

この状況が続いたことが、天然温泉への憧れが失望に変わって行った理由だと思っています。

実のところ、ほんの20年前までは温浴施設の衛生管理はもっとおおらかで、バリエーションがありました。お湯を濾過循環して連日利用した場合に問題となるレジオネラ菌という概念もあまりよく知られていなかったのです。

一気に風向きが変わったのは2002年、宮崎県の公共温浴施設で起きた集団感染が起きた時からです。最終的には疑い患者を含めると295名の利用者に健康被害を与え、うち7名の方が亡くなられるという、国内でも例を見ないレジオネラ症集団感染事例となりました。

そこから保健所の指導も厳格になり、多様な方法があったお湯の衛生管理方法は、ほぼ塩素消毒以外は認められにくいという状況になりました。

しかし、これには別の大きな問題がありました。日本の温泉のpHは中性〜アルカリ性のものが圧倒的に多いのですが、アルカリ性の温泉に対しては、塩素の殺菌力が充分に発揮されないのです。

以前からメルマガに書いていますが、pH6.0(中性)時の塩素の殺菌力を100%とすると、pH7.5で約50%、pH9.0なら5%以下となります。つまり、高アルカリ性の温泉では、塩素の殺菌力はほとんど効いていない状態となってしまうのです。

効かないのに塩素を入れろ、というおかしな指導が行われていた時期がしばらく続きました。

塩素の他に安定的で経済的な殺菌方法が確立していなかったという技術的な問題もありました。

この状況が変わり始めたのは、ようやく最近になってのことです。

厚生労働省の最新「公衆浴場における衛生等管理要領等について(全文)」(令和2年12月10日時点)
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000556111.pdf
を見ると、こう書いてあります。

「浴槽水の消毒に当たっては、塩素系薬剤を使用し、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を頻繁に測定して、通常 0.4mg/L 程度を保ち、かつ、遊離残留塩素濃度は最大1mg/L を超えないよう努めること。」

「高 pH の泉質に塩素系薬剤だけを用いて消毒をする場合には、レジオネラ属菌の検査により殺菌効果を検証し、遊離残留塩素濃度を維持して接触時間を長くするか、必要に応じて遊離残留塩素濃度をやや高く設定すること(例えば 0.5〜1mg/L など)で十分な消毒に配慮をすること。あるいは、結合塩素であるモノクロラミン消毒によること。アンモニア性窒素を含む場合や高 pH の温泉浴槽水の消毒には、濃度管理が容易で、十分な消毒効果が期待できるモノクロラミン消毒がより適していること。」

2002年の事故から18年という時間をかけて、アルカリ性温泉に対しては従来の塩素消毒は十分な方法でないということが、ようやく公式に認められたのです。

モノクロラミン消毒もまだ新しい技術で、提供するメーカーも限られる状況ですので、普及するには時間がかかると思われますが、私はあと10年もすると、浴槽水の衛生管理は塩素から他の技術に置き換わって…

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