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今日は 2021年11月8日です。
◆リスクを知る
Twitterで、最近の新しいサウナ施設や試みに関してその安全対策を懸念するつぶやきを見ました。私も同様に感じています。
思い返してみると、最近起きたサウナでの火災はすべて新しいタイプのサウナで、従来から普及してきた営業用サウナではありません。
日本サウナ・スパ協会のサウナ設備設置基準が、電気ストーブとガスストーブについてしか記載されていないことからも分かりますが、日本で長らくサウナで大きな事故が起きていなかったのは、完成度の高い製品と施工技術の範囲内で作られてきたからで、その枠に収まらない新興サウナについてはまだどのように扱うべきか、製作する側、許認可する側、運用する側、利用する側いずれも未知の世界で試行錯誤の途上にあるのです。
これまで大きな事故が起きていなかったので、日本ではあまり危機感が持たれていないようですが、当然のことながら高温の熱源を使用するサウナは火災のリスクと隣り合わせです。
「オールドスモークサウナ」(中山眞喜男著)には、
──フィンランドのクラピィ(krapi)のスモークサウナも過去三回火事で焼失し、現在のものは四代目である──
といった記載がありますが、スモークサウナや薪ストーブがあるフィンランドでは、サウナの火災についても経験豊富でリスクは十分に理解されていることと思います。
日本のサウナの歴史はまだ浅いため、事故の経験も少なく、リスクへの認識が不足しているということなのでしょう。とはいえ、これから事故を経験して学んでいる場合ではありません。過去の経験を共有することで、事故を未然に防がなければならないのです。
以前メルマガ第1525号「先人たちの教え」( 2021年4月17日執筆)でご紹介した、昭和43年の有楽サウナ火災。その後被害者遺族が訴訟を起こした判例の記録を見つけましたので、リンク先をご一読ください。
https://bit.ly/3CXFXtl
「無炎着火」(ヒーターが長期にわたり木製部分を加熱することによつて、その木材が次第に炭化してゆき、ついには他の火種がなくてもそれ自体で着火するに至る)について説明がありますが、サウナの開発や施工、経営に関わる人は、この現象を知っていなければなりません。知らなかったでは済まされないことは判例が語っています。
2017年に韓国の堤川スポーツセンターで起きた火災では、29人が死亡、36人が負傷するという大きな被害がありましたが、亡くなった方のうち20人は女性のサウナ利用者でした。
火災発生を知った建物の男性オーナーは、男湯やジムの利用客には直接避難を呼び掛けたのですが、女湯には駆け込まず、外から叫んだだけだったのです。
また、建物には女性スタッフもいたのですが、この女性スタッフは火災を知ると避難を呼び掛けることなく先に脱出してしまったそうです。これらの行為により、女性のサウナ利用者は外から叫んだ男性オーナーの呼びかけが聞こえずに逃げ遅れた可能性があると指摘されています。
本当の非常時には男湯だ女湯だとは言っていられませんし、男性スタッフであっても構わずバスタオルを持って浴室へ行き、緊急避難を呼びかけるべきでした。
入浴中の利用者、特に女性は逃げるのに手間取ること、サウナ室内からは外部の音が聞こえにくいこと、そして男性スタッフでも緊急時は女性浴室に入らなければならない場合があるといったことについて、想定していなかったことが被害を拡大してしまったと言えるでしょう。リスクを知っていれば、防げた被害だったかもしれません。
他にも、過去に私が見聞きしたサウナの火災例としては、
・ストーブガードに干していたタオルから出火
・サウナタイマーの電源コードに耐熱製品が使われていなかったため漏電して出火
・薪ストーブの煙突が老朽化して火力に耐えられず出火
など、思わぬことから…
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