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今日は 2021年10月19日です。
◆黙浴の先
飲食店から始まった「黙食」という言葉がTwitterのトレンド入りして、それならば温浴施設は「黙浴」だな、と考えてすぐに汎用性のあるPOPを作りシェアしたのは2021年1月30日の記事でした。
当時はコロナ禍の正体も先行きもまったく分からず(今もですが)、お客様に来てもらうためにはどうしたらいいのか、少しでも安心できる環境を作り、万が一にも温浴施設がクラスターを発生させる危険な場所とやり玉に上がるようなことがあってはならないという、必死の思いでした。
その思いに共感してくれたのか、弊社がデザインしたPOPをそのまま貼ってくれている施設も多々見かけましたし、ニフティ温泉さんの黙浴ポスターも登場し、さらに黙汗、黙蒸などの言葉のバリエーションも出てきて、「今は浴室で喋らないようにしよう」という考え方はかなり広がったと思います。
黙浴とは言っても、他の場所ではほとんどが全員マスク着用であることに比べれば、マスクをはずして、お互いの顔が見える状況で小声で話せるのですから、浴室はかなり特異な環境と言えるでしょう。
それから10ヶ月。
温浴施設は館内の各種感染防止対策、時短営業や酒類提供の自粛を求められるなど制約はあったものの、特段感染リスクの高い場所とされることなく、客数・客単価減少に苦しみながらもどうにかここまで来ました。
コロナ禍とほぼ重なるように起きたサウナブーム、夜は飲食店が営業していないために行き場がないといったことも手伝って、かつてとは違う客層も来てくれるようになりましたが、それゆえに新たな軋轢も起きました。
公衆マナーをよく理解していない人たちと、温浴施設にはいろいろな人がいるんだということが受け入れられない人たちです。
不特定多数が裸になって一緒に入浴する場では、お互いに高度な公衆マナーを会得していないと、混乱や衝突が避けられません。
しかし、温浴施設の利用に慣れていない人たちはどう振る舞うべきかを知らず、また普段の状態を知らない人たちは多少のマナー違反の人たちに対して寛容になれないのです。
黙浴という言葉は、たった二文字で「黙って入浴しましょう」というシンプルなメッセージを伝えていますが、それは厳格な決まり事なのか、それとも心掛けや気遣いの話なのか、微妙なニュアンスは人によって受け止め方が異なります。
そもそも、公衆浴場には地域のコミュニティであったり、親子や友人との語らいの場という役割があり、喋ってはならない所ではなかったはずなのです。
緊急対応として作ったわずか二文字の言葉足らずなメッセージは、今となってはお客様同士の対立や分断を生み出す種となってきています。
全国的に飲食店の営業規制も撤廃されつつありますから、そろそろ次のメッセージに貼り替えていくタイミングだと考えています。
熊本の湯らっくすでは、会話するなら換気の気にならない露天エリアで、としつつスタッフが「大きな声での会話 ✕」と書いたプラカードを持って巡回します。
横浜天然温泉満天の湯では、「会話は控えてください」という言葉に変え、女の子が「しー」と口に人差し指をあてているイラスト。子供でも理解できるように表現しています。
人気施設は敏感に風を読みながら、常に最適なメッセージを模索しています。
さすが、ですね。
(望月)