皮膚と温浴

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神秘的な色の湯をたたえる蔵王温泉(新左衛門の湯

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今日は 2021年10月11日です。

皮膚と温浴

 薬湯にじっくり入った後、身体をちゃんと洗ったにも関わらず、翌日空手の稽古で大汗をかいたら、自分の身体から薬湯の匂いがプーンと漂って恥ずかしい思いをしたことがありました。

薬湯成分が皮膚の奥にまで浸透し、普通に洗ったくらいでは落ちていなかったのです。

しかし、そのように体内に浸透するからこそ薬効があるとも言えます。甘草、陳皮、生姜、当帰…身体に良いということで古くから使われている薬草は、今でこそ「民間療法」に括られてしまいますが、治験の浅い西洋医学の医薬品よりもよほど信頼できる面もあると思っています。

自分の身体にしみ込んだ薬湯の匂いがいつまでも残るという体験によって、湯水に身体を浸けることは、温熱や水圧の作用だけでなく、その水の成分や性質も重大な影響力を持つと実感するようになりました。

当然のことながら温泉もそうです。アルカリ泉は皮膚を柔らかく清浄にする、塩化物泉は熱を逃がさない…そういった表面的な化学の世界だけではなく、もっと複雑で多様な作用があるからこそ、大昔から天然温泉が貴重なものとされてきたのだと思います。そうでなければ、わざわざ苦労して天然温泉を掘らなくても、重曹や塩化ナトリウムを入れておけば良い、となっているはずです。

体表から体内にしみ込むのとは逆に、体内から皮膚を通じて様々なものが排出されているということもあります。汗による水分調整と体温調整はよく知られていますが、汗をかき過ぎるとナトリウムが欠乏して塩っぱいものが欲しくなる、焼肉を食べた翌日に顔が脂ぎった感じになるといったことは経験的にご理解いただけるかと思います。

薬を飲むと、小さな一粒であっても体臭が変わったりするのを感じることもあります。

皮膚はゴムやビニールのような防水性の膜ではありませんし、GORE-TEXのように湿気だけを通す新素材でもありません。皮膚は呼吸しているし、様々な物質が出入りしながら体調を保っているのです。

そしてサウナには、発汗の促進だけでなく、様々な物質が出入りする皮膚機能全体を活発化させる効果があると考えています。

「汗はほとんどが水分なので、汗をかいてもデトックスの意味はない」と言われますが、皮脂や塩分など水分以外の物質も皮膚から出入りしている以上、サウナが総合的に皮膚機能を活発化させているのであれば、デトックス効果もあるのではないかと思うのです。

さらに言うと、皮膚は生きています。自分の皮膚細胞だけでなく、常在細菌とバランス良く共存することでpH調整や保湿など皮膚のバリア機能が保たれています。常在細菌と感染制御や免疫力との関係も研究されるようになってきました。

そんなことを考えていると、ボディソープやシャンプーを使ったり、塩素入りの水を浴び続けても良いんだろうか、という疑問が湧いてきます。

現代の生活にこれだけ普及しているものを私ひとりが否定してもはじまらないことですが、個人的にはボディソープやシャンプーの化学成分を積極的に自分の皮膚に浸透させたいとは思いませんし、塩素にさらすのもできるだけ避けたいと感じます。

清潔にすることは大切ですが、清潔とはミネラルや常在細菌のバランスがとれた健全な状態が自然に維持できていることであって、除菌や無菌のことではないと思うのです。

人は試行錯誤しながら、だんだん良い方向に向かっていくと思っていますが、皮膚の機能と健康の関係、そこに温泉やサウナが果たす役割などはまだまだ研究が浅く、正しい答えに近づくには長い時間が必要となりそうです。

(望月)

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