掛け水のマナーを考える

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今日は 2021年10月9日です。

◆掛け水のマナーを考える

 水風呂に入る前の汗流しマナーについて、いろいろな意見が噴出しています。

公共マナーとは、その時代の衛生観念や利用者相互の満足度、安全性、経済性などを考慮しつつ、合理的でバランスの良いふるまいはこうではないか?と揺れ動きながら決まっていくものだと思います。

公共の場でのマナーを理解して、皆が気分よく利用できるようにしたいものです。

全身汗だくのまま水風呂に入るのは、衛生面で不快に感じる人が多いと思われますので、どのような方法にしろサウナでかいた汗は水風呂に入る前に流すべきですが、その流し方にはいろいろな流儀や考え方があります。

SNS等で時折見かけるのが、

  • 立ったまま掛け水を浴びると水が飛び散るので、しゃがんでかけるべき。
  • 人が入った水風呂の水を頭から浴びるのは気分が悪いので、シャワーを使いたい。
  • 水ではなく、お湯で流した方が温冷の差を爽快に楽しむことができる。
  • 身体が熱い状態でそのまま水風呂に入ると水温がぬるくなるので、粗熱を取ってから入るべき。

といった意見です。自分の考えと違う行動をとる人に対して怒っていることもあるようです。

水風呂の浴槽が床に埋め込まれ、水面の高さが床に近いレベルになっている場合は、掛け水が飛び散ると入浴している人の顔にかかったりすることがありますので、その場合はしゃがんで静かに掛けるのがマナーとなるでしょう。しかし水面レベルが床よりも上にある浴槽なら、この点はあまり気にする必要がなさそうです。

どこで汗を流すのかということについては、掛け水・掛け湯槽が用意されているのか、近くにシャワーがあるのかといった設備環境や動線の事情によって、できるできないがあるでしょうから、そこはあくまでも個別事情と考えていいと思います。

ただし、経済性という点ではシャワーに軍配が上がると思います。掛け水の場合、見ていると洗面器で5杯くらいかける人が多いようですが、洗面器1杯3リットルだとすると15リットル。シャワーなら1分弱、10リットル以下で済むと思います。

せっかくチラーで冷やした水を掛け水でじゃんじゃん捨てられると、その分常温の補給水が入り、チラーの運転負荷が増大します。

仮に常時20人が出入りするサウナだと、水風呂は1人時間あたり3セットで60人が入ることになり、その掛け水による水の消費は15リットル×20人×3セット=900リットル=0.9立方m/hです。

上下水道料金が両方ともかかるような環境だと、1リットルあたり0.8円(東京都)、1時間あたり900リットルなら720円。
×12時間×30日なら259,200円のお金が水風呂の掛け水に消えていきます。これは結構痛い。

チラーの電気代を仮のケースで計算してみますと、チラーは例えば三菱電機の空冷式インバーターチリングユニットMCAV-P540F1。積算見積価格で税抜き6,485,000円という立派な設備ですが、男女で4tの水風呂の水温を5度下げて2回転させるような運転をしても、消費電力は15kw/hくらいですから、時間あたり450円くらい。運転負荷の変化は時間あたり数十円でしょうから、金額にするとあまり大きな違いではなく、これはそれほど気にしなくても良いようです。

経済性や環境負荷という面では、汗流しに使う水の量は控えめに…ということになります。

浴びるのは水かお湯かということは、個人の好みであり、他者にはあまり分からないことですから、好きにすれば良いと思います。急激な温度差がキツイので徐々に身体を慣らしたいという人もいるでしょうし、温度差が激しいほど気持ち良いと思う人もいます。

粗熱をとらないと水温がぬるくなるという問題は、水風呂の浴槽容量が小さくて元々の水温が高めだったり、入浴客が多い場合。さらにチラーの能力不足や、かけ流しの場合は補給水が少ないと起きることがあります。水風呂の温度自体は好みの分かれる部分ですので、これも全国共通マナーとは言えません。利用者同士のマナーというよりは、利用者と施設側の対話によって最適化されていくべきでしょう。

いずれにしてもマナーというのは、正解がひとつとは限りませんし、法律でもありません。他者に対する思いやりなのですから、施設側も利用者同士も、怒りや強要ではなくて、お願いする、知らない人には教えてあげる、という穏やかな気持ちが必要と思います。

(望月)

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