当たり前は勘違い

※濃すぎる源泉の結晶(ナステビュウ湯の山)

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今日は 2021年10月2日です。

当たり前は勘違い

 科学技術が高度に発達したと思われている現代においても、人類は地中の深いところで何が起きているのか、まだ正確に知ることはできません。

温泉や井戸水が出るのか出ないのか、何メートル掘ったらどんな性質の水があるのか。それはいつか枯渇するのか…。探査や過去の情報から類推することはできますが、結局のところは実際に掘ってみないと分からない。

宇宙に飛び出し、遺伝子情報を解読し、文明を謳歌するようになっても、ヒトは実のところ自分の足元すらよく分かっていないのです。

 700年の歴史を誇り、日本三大薬湯のひとつに挙げられる新潟県十日町市にある松之山温泉。先日の100事例セミナーでも登場した、コロナ禍でも元気に果敢なチャレンジを続けるナステビュウ湯の山はその松之山温泉の一角にあります。

有名温泉地ですから、ナステビュウ湯の山も名湯自慢の施設なのですが、その自慢の自噴温泉が突然ストップし、営業できなくなったのは2016年のGW明けのことでした。

急に源泉の勢いが弱くなったと思ったら、数日のうちに完全に湧出が止まりました。地中深くのこと、当初は原因も対処法も分からず、完全にお手上げの状態で営業再開の見込みなど全く立ちません。弊社にも連絡をいただきましたが、何のアドバイスもできませんでした。

当たり前のように湧いていた自噴温泉が出ない。良質な温泉への依存度が高かった温浴施設にとっては致命的な状況です。

そこから調査と検討を重ね、自噴から動力揚湯への切り替えという対策がぼんやり見えてきたものの、超高温源泉のため海外への特殊ポンプ手配、温泉審議会の手続きなど時間のかかる障害が立ちふさがります。

いつ営業再開できるのか、誰にも分からない中で、高橋社長のとった行動は意外でした。

再開の見込みを告知できない長期休館が続けば、「ナステビュウ湯の山はつぶれた」「あそこはもう源泉が枯渇してダメだろう」といったネガティブな噂も拡がります。そうならないよう、花壇に3,000本もの苗を植えてたくさんの花を咲かせ、駐車場で青空市をやり、施設のメンテナンスを続け、ブログや会員へのニュースレターも発信し続けたのです。最小限の雇用もなんとか維持し続けました。

風呂を提供することができない風呂屋に何の存在意義があるのか、と考えがちです。しかし、風呂を提供することだけが事業の本質ではなく、お客さまとのおつきあいをとことん大切にすること、そして事業の存続を絶対に信じ続けることが大切なのだと思います。そう考えると高橋社長がとった行動の意味も理解できるような気がします。

とうとう営業を再開できた時は、源泉ストップから15ヶ月もの月日が過ぎていました。

この時の経験があるから、コロナ禍で周りの温浴施設がすべて休業しても、ナステビュウ湯の山は簡単には休まなかったのです。

自店を支持して、今日も来てくれるお客さまがいる。温泉が湧いて営業できるだけでもありがたい。その思いは、誰も来てくれないことや、営業したくてもできないことへの怖れとも言えます。

お客さまが来なくても会社はつぶれない。自分の仕事があるのは当たり前。給料はもらえて当然。それは大きな勘違い…

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