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今日は 2021年8月20日です。
◆温浴と平和
メルマガ記事で書いたら、いまこのコロナ禍の中で観光地箱根にある天山はどうなっているのかと気になって、昨日の昼間にひとっ風呂行ってきました。
箱根湯本の町自体が人影まばらで、天山の駐車場も信じられないくらい空いていました。いくら平日でも、普段ならこんなことはあり得ないのですが…。
入浴している人も少なく、蝉時雨の中の野天風呂を心行くまで堪能させてもらうことができました。
澄みきって贅沢そのものの湯に感激しながら内風呂のあつ湯に入浴していると、70歳前くらいの年配で全身に立派な入れ墨が入った男が話しかけてきました。
「一番熱いのはどれ?」
その爺は熱い湯が好きだそうで、「ここと、露天の奥の浴槽が一番熱いっすよ」と教えてあげました。
話好きなその入れ墨爺は、横浜の伊勢佐木町に住んでいて温泉が大好きだそうで、韓国人の妻とよく温泉に出かけるのだとか。「変なことに金を使うくらいなら、温泉に行くのが一番いい。」「嫁は草津の温泉の匂いが苦手で、俺は好きなんだけどなぁ」などと世間話が弾みます。
「ここは良いなぁ。いつ頃できたんだろう?」と言うので、「昭和41年ですね。」と答えると私が温泉に詳しいと思ったのか、質問攻めに。
そうこうしているうちに、私の方が熱さに耐えられなくなって、先に退散。
最後に「なんだ、もう上がっちゃうのか」と爺にマウンティングされてしまいました。
「爺め、この俺を誰だと思っているんだ」などと思いつつ、愉快な気分に満たされながら、いつもの喫茶コーナー「うかれ雲」へ。ここで湯あがりにトーストセットを頼み、瓦版を読むのがいつもの習慣になっています。
その瓦版第五十四号に興味深い一文がありました。南北朝時代の合戦模様を記録した『源威集』に書かれた出来事で、当時京の都では南朝方と北朝方に分かれて合戦が繰り広げられていたのですが、合戦のない日は敵も味方もなく洛中の湯に集っては世間話をして過ごし、何の問題も生じなかった、とのこと。
本当なのかと思い源威集をネット検索してみると、「合戦成ラヌ日ハ、御方敵洛中ノ湯屋ニ折合、時々物語過メ合シ更ニ無煩シ成。」とありました。
湯に入ってはだかになれば敵も味方もなし、というのは素晴らしいことだと思います。
思想も職業も入れ墨もコロナも関係なし。本来誰でも安らかに憩い楽しめる場所が湯屋・風呂屋なのですし、いつまでもそうあって欲しいものです。
(望月)
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