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今日は 2021年8月18日です。
◆理想とは形ではなくプロセス
「望月さんが思う理想の温浴施設とは?」「究極の温浴施設とは?」といった質問を受けることがあります。
これまでお付き合いしてきた温浴経営者の中にも、そのことを本気で考えている方がいらっしゃいました。
より良いものを目指して理想形を求める気持ちは大切だと思いますが、それは努力目標であって、本当に理想や究極を丸ごと実現してしまおうとするのはオススメできません。
まず、理想を求めるあまり、実現する難易度が上がりすぎて動けなくなるということがあります。どこかで妥協や見切り発車、あるいは数値的な割り切りがないと、検討しているばかりでは物事は前に進まないのです。
そして費用対効果。際限なく理想を追求すれば、より最新で高級で高品質に、あれもこれも欲しいとなり、規模もグレードも青天井に膨らんでいくでしょう。しかし敷地規模や資金調達、そしてマーケットの規模には限りがありますから、理想の実現は必ずしも最良の事業性ということではないのです。
さらに、理想は常に変化するということがあります。時代が変わり、設計やコンサルタントの提案は年々進化し、経営者自身も成長していきますから、ある時点で想い描いた理想は、いずれ必ず理想ではなくなる時が来ます。
そうなった時に古い理想形を壊してまた作り直すということになれば、これもまた事業採算性は難しいことになります。
あくまでも道楽なので事業性は問わない、という前提なら理想の追求もありだと思いますが、これまで道楽を貫きながらしっかり継続できている温浴施設は見たことがありません。
道楽で過剰投資した挙げ句、蓋を開けてみたら赤字の大きさにびっくりして短期間で放り出すというのがこれまで何度も見てきたパターンです。振り回される現場はたまったものではありませんし、その結果があらかじめ予見できていたら、いくら大金持ちでもそんな道楽に手は出さないでしょう。
日帰り温泉の草分けと言われ、日本中の温浴施設が手本のひとつとしてきた施設が、箱根にある天山湯治郷です。
https://tenzan.jp/
その天山は、昭和41年(1966年)創業、川べりの自然発生的な露天風呂のみからはじまっています。やがて共同湯として賑わい、10年後にはJTBの書籍で「1人で行ってみたい露天風呂ベスト50」に選ばれます。
さらに10年経った1986年頃から本格的なリノベーションが始まり、男湯、女湯、本棟、レストラン棟と増築していき、どんどん人気が高まって駐車場が足りなくなり、回転率を重視した風呂のみの湯屋一休を建設。さらに湯治コンセプトや食の充実、個室棟など進化を続けて現在に至ります。
皆が手本としているくらいですから、その施設も運用も素晴らしいものですが、はじめから今の形を狙って作られたものではないという点が重要だと思います。
時代の変化に合わせながら徐々に継ぎ足し、進化を続け、半世紀以上の時間をかけて現在の姿が…
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