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今日は 2021年8月5日です。
◆日本初!イノベーションサウナが爆誕するまで(10)
サウナの排気と給気を熱交換しながら強制換気するシステムについて、残る最大の課題はCO2濃度。
強制換気システムの試運転の翌朝、営業開始前にまた20人の男たちがゾロゾロと集まり、前回(2021.04.21)同様の条件で測定実験を行いました。
・屋外複数箇所…(前回)400ppm台 (今回)400ppm台
・人がいる大浴場…(前回)737ppm (今回)461ppm △276ppm
今回の方が大浴場のCO2濃度が下がっているのは、大浴場の換気方法を変えたためです。従来は大型換気扇に頼る方式だったのですが、排煙窓をすべて開放し、浴室の反対側にガラリの開口部を設けて空気の通り道を作りました。ほぼ浴室全部外気浴にしたのです。
この変更も、悪天候の時にはどうなるのか、冬期は寒いのではないか、といったことを懸念する意見が出たのですが、箱根天山や熊本湯らっくすの事例を説明して、とにかくやってみようとご決断いただきました。
そしてサウナ室。前回同様に、20人が同時に入室して10分間誰も出入りしないという過酷な条件をつくり出しました。
・20人ドア開閉なし10分後…(前回)2,410pm (今回)1,713ppm △697ppm
理想としている1,000ppm以下にまではなりませんでしたが、前回の自然換気との比較では大幅に改善しています。
20人満員で1,713ppmの状態から、30秒ごとに1人出てまた1人入ってくるという混雑時の利用状況を再現してみると、6分後には961ppmに下がりました。
前回実験では到達しなかった1,000ppm以下。ドア開閉と合わせれば、このサウナ室は満員でも常時1,000ppm以下を保つ換気能力を持っているということになります。
現在のように定員を減らした状態はもちろん、かつての20人定員でもドアの開閉があれば、1,000ppmを超えることはほとんどないでしょう。
かくして、サウナの排気と給気を熱交換しながら強制換気するシステムは、目標とする性能に到達していることが確認できたのです。
この換気システムを入谷社長が「イノベーションサウナ」と呼んだのには理由があります。
暑さをしのぐための道具として昔から団扇があります。扇風機の登場は団扇の改善ではなく、涼をとる方法として改革的な出来事でした。さらにエアコンの登場も扇風機の改善ではなくて改革。それと同じように、自然換気サウナから熱交換換気サウナへの変化も、改善ではなく改革的な出来事と言えるのではないか、ということです。
現在のようなコロナ禍でなくても、サウナの換気量を増やして新鮮な空気を入れた方が気分が良いということは、元々誰もが自然に思ってきたことでしょう。しかし、エネルギーロスを考えたらせっかく温めた空気をどんどん捨てるわけにはいかない。今まで誰もがそのジレンマに立ち止まるしかなかったのです。
もし途中で挫折したり、期待するほどの性能が出なければ、開発人件費+部品代+工事費がすべて無駄になるというリスクを負いながら、そのジレンマを突破し、イノベーションを起こしてくれた入谷社長と太閤の湯の皆様にあらためて敬意を表します。
今回、このメルマガで換気システムの開発プロセスを詳らかに書いたのは、この情報をこれからのサウナの安全性や快適性の向上に役立てて欲しいと思うからです。
見切り発車と現場調整でどうにか目標性能には到達しましたが、これはまだプロトタイプであり、改良の余地は多々あると感じています。
とはいえ、有馬温泉太閤の湯は温浴施設。アクトパスは温浴経営コンサルタント。アクアプランニングは温浴施設企画設計。本来、空調設備や電気製品の開発といったことは専門ではありません。
ここから先へ進んでいくためには、もっといろいろなケースの導入現場と専門知識が必要となるでしょう。次のチャレンジャーために、第一歩目の記録として残しておきます。どうぞよろしくお願いいたします。
(望月)