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今日は 2021年8月2日です。
◆日本初!イノベーションサウナが爆誕するまで(7)
20人の男たちが高温の中でひしめき合い、誰も出入りしない締め切ったサウナ室。
通常の営業状態ではまずありえないような過酷な状況をあえてつくり出し、測定した10分後のCO2濃度は、2,410ppmに跳ね上がりました。
ちなみに実験前に測定したCO2濃度は、
・屋外…複数個所で400ppm台
・大浴場…737ppm(実験参加者が点在、営業状態に近い)
・サウナ室…885ppm(利用者不在、測定者のみ在室)
でした。
コロナ前の定員20名を入れて、扉の開閉がないと、10分間で885ppm→2,410ppmにまで上がってしまうのです。
ある程度予想されていたことではありますが、やはりサウナ室の小さな給排気口からの自然換気だけでは、換気は不十分ということが分かりました。
その後、ドアの開閉を繰り返せば、少しづつCO2濃度が下がっていくということが分かりました。やはりドア開閉が換気に果たす役割は大きいと言えます。
しかし、その後30秒ごとに人の出入り(1分間に4回のドア開閉)を繰り返したのですが、10分経ってもまだ1,000ppm以上。太閤の湯の場合、従来の20人定員は、二酸化濃度という観点からは換気能力不足であることが分かりました。
ところで、1,000ppmという基準は、それを超えるとただちに危険であるとか、違反であるということでは全くありません。良好な室内空気環境を維持するためにそろそろ換気しましょう、という目安として示されているだけで、地下鉄や締め切った車の中など、日常的な社会生活の場でも1,000ppm越えになることは多々あります。
労働安全衛生法の事務所衛生基準規則では、二酸化炭素濃度は5,000ppm以下と規定されています。
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-36-2-0.htm
東京消防庁では呼吸数などに本人が気づきにくい変化があるのは20,000ppm、不快感や意識レベルの低下が起きるのが40,000ppm、意識喪失や短時間で生命の危険があるのは100,000ppm以上としています。
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/080920yo193.pdf
1,000ppmというのは、あくまでも安全快適な居室環境を保つための換気の目安であり、コロナ禍で注目を集めるようになりましたが、従来のような自然換気サウナがすべて問題ということではありませんので、この点はどうか誤解のないようにお願いします。
もうひとつ、わかったことがあります。湯気がこもりやすい大浴場には大きな換気扇がついており、かなりの換気能力があるのですが、人が多ければそれなりに二酸化炭素濃度が上がっているということ。
つまりサウナ室の換気の対象が二酸化炭素濃度の上がった大浴場の空気だったら、自然換気、ドア換気、強制換気いずれにしても換気効果が低下してしまうということです。これを解決するためには、サウナ室の換気対象を外気とするか、大浴場全体の換気をもっと良くする必要があります。
この実験を行ったのは2021年4月21日。ちょうど兵庫県知事が3度目の緊急事態宣言を国に要請するというニュースが報道された日でした。
実験結果のデータを見て、入谷社長の肚が決まりました。これまで安全安心な温浴施設を目指して数々の対策を講じてきたのに、サウナの換気問題だけ目を瞑るわけにはいかない、ということです。
それまで私やアクアプランニングさんに対しては、「良い方法を検討して欲しい」という相談レベルであり、風量設定、轟音、壁の穴開け、ダクトの取り回し、ショートサーキット、結露、エネルギーコスト、工事費…などまだ未解決の問題が山積みに残っている状態だったのですが、その段階で熱交換換気の導入を決断されたのです。
我々としては未解決問題をいつまでも抱えて悩み続けているわけにはいかず、早急に解決しなければならなくなってしまいました。(つづく)
(望月)