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今日は 2021年7月28日です。
◆日本初!イノベーションサウナが爆誕するまで(4)
ロスナイⓇのことを知っていたのは、自宅にあるからです。
自宅マンションから直線距離で13kmくらいのところに厚木基地があり、上空を飛行機がよく飛び交っています。
その騒音対策で周辺地域の住宅には防衛庁から助成金が出るということで、数年前にマンション全体で防音工事をやったのです。
その工事内容のひとつが、熱交換しながら換気できる三菱電機製のロスナイⓇの導入でした。ちなみにロスナイとは「ロス(エネルギーロス)が無い」換気扇というダジャレのようなネーミング。(実際には少しロスしますが)
換気扇の一種ですから構造はシンプルですし、本体価格が数万円ということもその時の経験で知っていましたので、仮にサウナ室の換気を強化することになっても、温度低下やエネルギーロスはたぶん回避できるだろうと踏んでいました。
入谷社長に「サウナの給排気口からの自然換気量はわずかで、ドア開閉による換気は条件によってかなり結果に幅がありそうです」ということを報告したところ、やはりファンによって換気能力をアップする方法を考えて欲しいという話になりました。
強制換気で十分な換気量を確保しつつ、サウナの温度低下やエネルギーロスを防ぐためにはやはり熱交換しかない。そこで、調べるよりも聞いた方が早いということで三菱電機さんに電話しました。
私:「あの、サウナの換気能力をアップしたいんですけど、ロスナイは高温のサウナでも設置できます?」
窓口の人:「温度は何度くらいになりますでしょう?」
私:「90度くらいです。あ、上の方だと100度以上あるかも。あと熱気だけでなくて、水蒸気とかアロマも含んでいることがあります。」
窓口の人:「ロスナイは設置できませんね。耐熱温度は40度台までの設定です。」
私:「耐熱型のロスナイはないんですか?」
窓口の人:「ありません。送風ファンの動作環境が40度台までです。」
私:((((;゜Д゜)))
ということで、あえなく撃沈。ちょっと考えが甘かったようです。
ショックを受けつつも気を取り直し、自宅のロスナイを開いて内部構造を調べてみました。
構造はやはり簡単でした。室内の空気と屋外の空気をファンで送り、その空気をロスナイエレメントと呼ばれる段ボール紙のような構造の中を通過させクロスさせることで熱交換しています。
これならそれぞれの部品に耐熱性の高いものを使えば、何とかなるんではないの?と考えました。素人の浅はかさというやつです。
耐熱型のファンは、150度でも大丈夫な製品が普通にネットで売っているのを見つけました。
問題は熱交換部分の耐熱性です。高温、高湿度、時にはロウリュもするという過酷な環境でも熱交換性能を発揮し、しかも業務用機器としての耐久性が要求されます。
全国各地の空調機器メーカーやOEM工場などに連絡しまくっているうちに、ようやくロスナイエレメントに近い構造で、アルミ製の熱交換部品を扱う工場を見つけました。
…と、話がトントン拍子に進んでいるように書いていますが、この段階に来るまでに、最初に入谷社長からサウナ換気の相談を受けてから半年が経過していました。
私も本業が忙しい上に、空調とか熱交換とか技術的なことは本来畑違いですから、実際はもっと迷走しているのです。
私が迷走している間にも、有馬温泉太閤の湯では安全安心なサウナの確立に向けて、着々と手を打っていました。
サウナベンチに抗ウイルス加工した飛沫防止用ボードを設置し、お一人様用にブース化。定員を従来の半分の10名で固定し、おしゃべりできない環境にしました。
そして、サウナ室内で使用する木製腰掛け設置。これは以前メルマガ第1544号「有馬方式で一石三鳥」(2021年5月14日執筆)でもご紹介しました。
現場対応でやれることはすべてやりつつ、コロナ禍の行方を見守る。もし事態が早期終息に向かうようなら、太閤の湯としては無理して熱交換換気などという未知の分野に投資する必要はなくなります。冷静かつ油断のない経営スタンス。
しかし、2021年1月8日に首都圏は2度目の緊急事態宣言となり、有馬温泉がある兵庫県も1月14日に首都圏に続いて対象地域に指定されてしまいました。事態はなかなか好転の兆しが見えてきません。
開発を担当する私の方は、耐熱型の熱交換エレメントと耐熱型送風ファンについては解決の目途が立ったものの、その後まだいくつもの困難があることが分かってきて、再び暗礁に乗り上げていました。(つづく)
(望月)