人は人によって癒される(3)

(後年になってCABANAに導入されたカプセルホテル)

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今日は 2021年6月21日です。

人は人によって癒される(3)
 先週のメルマガ第1573号「人は人によって癒される(2)」(2021年6月17日執筆)に、

──ニュージャパンサウナで教わった「人は人によって癒される」という言葉は、戦後復興期のキャバレー時代から受け継がれてきたニュージャパンのDNAのひとつです。──

と書きましたが、それに絡んでひとつのエピソードを思い出しました。

顧問をさせていただいていた当時、なんばのニュージャパン観光ビルでは
・高級店のVIPサウナ
・超本格志向のスパプラザ
・大衆価格のCABANA
という性格の異なる3つの男性サウナ店を営業していました。

ちなみに女性用がレディースサウナひとつだけだったのは、温浴の男女マーケットの違いからそうなったわけではなく、元々ニュージャパン観光という会社が、戦後の女性たちの生活を支えようとしたところがミッションだったからで、必然的に女性によるおもてなしを男性客に提供して商売するというスタイルが得意分野となっていたのです。

その3つの男性サウナ店のうち、CABANAだけが24時間営業でした。

酔っぱらって終電を逃した人や、出張の宿泊費を抑えたい人、夜の仕事の後など、深夜もそれなりの客数で賑わっていたので、もっと効率的に宿泊マーケットを取り込むためにカプセルを導入してはどうか?という進言をしたことがあります。

すると、「実は、世界では初めてカプセルホテルを作ったのはニュージャパンなんですわ」という話をしてくれました。

日本が高度経済成長の真っ只中にいた頃、サウナは低料金で仮眠がとれる場所として連日賑わっており、宿泊需要の増大に応えるための方法としてカプセルホテルが考案されました。その設計を黒川記章氏に依頼するあたりが何事も本格志向のニュージャパンらしいところです。
http://newjapan.co.jp/about/about3

梅田のニュージャパンサウナにはカプセルが導入されているのですが、なんばのニュージャパンにはなかったので、私としてはなんばにもカプセルを入れた方が宿泊売上が増えると考えたのです。

しかし、結論はNOでした。

「カプセルは、機能を提供するだけの商売になってしまう」というのがその理由でした。

サウナは「環境」と「技術」そして「接遇」を提供してお客様をおもてなしする商売であり、「機能」だけのカプセルではおもてなしができない、ということなのです。
https://newjapan.aqutpas.co.jp/2020/07/09/post-364/

今思うと、この議論の中にもニュージャパン独特の企業文化を垣間見ることができます。女性従業員が活躍する場を作るのがミッションであり、施設はその舞台装置であっても主役ではないのです。

主役が輝くための舞台装置だからこそ、徹底的な本格志向にこだわる。その考え方はキャストを大切にするディズニーランドとも共通するものを感じます。

当時効率化や売上アップという側面しか考えていなかった若造のコンサルタントは、圧倒的な企業文化の前に呆然とするしかありませんでした。

それから四半世紀。温浴業界は施設の大型化とスペック強化、そして安売り競争に明け暮れ、一方で徹底的に省力化して人件費を抑えるという、ニュージャパンの考え方とは真逆の方向へ向かっていきました。

しかし投資額の増大、投資回収の長期化、人材離れ、様々な面で従来型の温浴ビジネスは限界を…

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