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今日は 2021年6月4日です。
◆仕事の覚悟
前号、前々号とグランドオープンを控えた施設のスタッフ研修について書きましたが、実は、1日目の研修の後、ひとりの女性から採用辞退の申し出があったそうです。
もしかして私の研修内容が厳し過ぎたのか、想像していた仕事と違ったのか、辞退の真意は分かりませんが、また自分のしたことが人様の人生を変えてしまったのかも知れないと思うと、とても申しわけない気持ちになりました。
その温浴施設の経営がうまく行くようにお手伝いするのがコンサルタントの仕事ですが、誰かの人生に影響を与えたいなどと思っているわけではありません。
しかし、ひとつの事業に携われば、経営者のみならず、従業員、その家族、取引先、顧客、地域など多くのことに影響するのは避けられません。
その責任を考えると重圧を感じます。
コンサルタント契約の内容にもよりますが、基本的には期間内のお手伝いですし、支援先の皆様の人生の責任は取りようがない立場です。しかし、それでも何らかの影響を与えてしまう可能性があることがこわくてたまらないことがあります。
このことを特に考えるようになったのは、私がまだ30代前半で温浴コンサルタント駆け出しだった頃のことでした。
それまでは、温浴施設のコンサルティングとは言っても、市場調査や経営診断プロジェクトの経験しかなかったのですが、初めて業績不振店の経営改善という依頼で単独の顧問契約を受注しました。
依頼してくれた社長は、群馬県で小規模なスーパー銭湯を経営していました。
当時は一軒のスーパー銭湯を作るのに投資額5億円くらいかけるが標準だったのですが、そのスーパー銭湯は、前職で乳業メーカーのサラリーマンだった社長が一念発起、脱サラして3億円以上の大借金をして建てた施設でした。
現場に伺うと、施設にはローコスト化のための独自の工夫が施されており、それが功を奏している部分もありましたが、全体的にはチープになってしまっている面も否定できない印象を受けました。
何よりも当時はスーパー銭湯ブームで、次々と競合店が出現する時代でしたから、規模でもスペックでも後発施設に見劣りする施設をどうやって活性化するのか。今考えても難しい仕事でした。
損益計算書や営業日報を見ながら今後の見通しを打ち合わせしている時に、「もし経営改善しなかったらどうなるのか」という話になったのですが、社長はポツリと「最後は俺の生命保険で払う。」とおっしゃいました。
若造のサラリーマンだった私にとって、その一言は衝撃的なものでした。
コンサルタント会社に勤めて何年も経っていましたが。その時初めて、経営者は命がけの覚悟でやっているんだということを理解したのです。
私の提案や助言ひとつひとつがこの社長の命を左右してしまう。そう考えると…
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