有馬方式で一石三鳥

(許可をいただいて撮影)

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今日は 2021年5月14日です。

有馬方式で一石三鳥
 前職時代からの長いのお付き合い先である有馬温泉太閤の湯に入浴してきました。

兵庫県は現在「多数利用の集客施設(1000平米超)について、土日の休業要請、平日の時短要請」となっており、太閤の湯は臨時休館から営業再開したばかりというタイミングですので、利用者はまだ少なめだったのですが、サウナ室に入ると先客が一人、高いところで仁王立ちになって大量発汗しています。

いかにもヘビーユーザーとおぼしきその先客は、よく見ると入谷社長でした。(笑)

ご挨拶もそこそこに、さっそく気になっていたことを聞いてみました。気になっていたというのは、サウナ室前に積み上げらていた物のことなのですが、目から鱗の話をうかがうことができました。

 以前から、私がずっとモヤモヤと考えていたのが、サウナベンチの高さという問題です。

サウナ室の空気は上部と下部ではかなり温度差がありますが、サウナベンチ最上段から天井までの空間が広すぎると、せっかくの熱せられた空気は天井付近の届かないところにあり、高温好きのサウナファンにとっても、エネルギーロス的にも勿体ないことになってしまいます。

その状況を改善するためにはベンチをもっと高くして天井に近づければ良いのですが、内装と一体となっているサウナベンチを改修しようとすると多額の工事費用がかかりますので、現状のベンチがまだ使えるうちは手をつけにくいのです。

それならば、と思いついたのが木箱の設置によるベンチのかさ上げ。名付けて「ベンチブースター」です。

各段の座面に合わせて木箱を置いて高さ調整すれば、内装工事を回避しつつベンチの高さはいかようにも変えられます。

このアイデアは行ける!と思って、実際にサウナ用木材を使ってベンチブースターを試作しました。

試作品のサイズは幅1200×奥行450×高さ450。ベンチ各段の高さを450mmずつアップできるというイメージです。

しかし、サウナ用となるとそれなりの仕上げや強度が必要で、想像以上にコストがかかってしまうことが分かりました。試作品の製作コストは材料費と人件費合わせると1つ5万円近くになってしまいます。製品化すれば、販売利益と送料も含めると施設側の最終的な購入費は1つ7万円くらいになってしまうでしょう。

これでは成立しないな…ということになり、私のモヤモヤは晴れることなく続いていたのです。

もうひとつ言うと、ベンチ全体のかさ上げは、上から2段目のベンチに立った時に天井に頭をぶつけやすくなるという問題があります。

最上段のベンチに座る人の座高が90cm台だとしたら、上部の熱い空気を活用するためには最上段座面から天井までは110cmくらいあれば良いということになりますが、ベンチの高さが1段40cmとすると、2段目座面から天井までは150cmということになります。

これだと身長150cm以上の人が真っすぐ立つと頭をぶつけてしまうということになるのです。

実際には、人は天井が低ければ頭をぶつけないように気をつけてかがみますし、そのような高さになっているサウナでも問題なく営業しているところは多々ありますので、二段目から天井まで150cmにしてはいけないということではないのですが、怪我のリスクはできるだけ減らしたいところですから、これも気になる問題なのです。

 前置きが長くなりましたが、太閤の湯のサウナ室前に積み上げられていた物というのは、木製の風呂用腰掛けです。

入谷社長によれば、いろいろなサイズの腰掛けを試して、最終的に最適な高さ・重さの製品を決めたそうですが、それを使うと、座面が上がりますので、天井近くの美味しい空気を楽しむことができます。

しかも、座面の高さ自体は変わっていないので、頭ぶつけ問題も起きません。木製の風呂用腰掛けはひとつ数千円で買えるものですから、コスト的にも上記サウナブースターよりはるかに安価です。

内装工事か、あるいはブースターか、大袈裟に考えていた自分としては、小さな腰掛けは目から鱗の解決策でした。

入谷社長がこれを導入しようと考えたきっかけは、サウナマット問題。他人の汗で濡れたサウナマットの上に座りたくないという問題を回避するためには、一人用サウナマットを併用するのが一般的ですが、一人用布製マットは現場の運営負担が大きく、樹脂製マット(ビート板)では情緒がない。

コロナ禍でいっそう衛生面が意識される中、サウナマット問題をどうするか悩んでいて、思いついたのが腰掛けという方法だったのです。

これが結果的に、座面のかさ上げと、2段目から天井までのクリアランス確保という別の問題の解決にもつながっているのですから、一石三鳥。もう参りました!と言うしかありません。

自らが入浴して問題と向き合うことが…

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