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今日は 2021年4月17日です。
◆先人たちの教え
一般財団法人消防防災科学センターが提供する「消防防災博物館」というサイトがあります。
過去の火災事故がデータベース化されており、昭和7年からの「特異火災事例」がまとめられているのですが、そこに「有楽サウナ」という事例が掲載されています。
有楽サウナ火災は、昭和43年、現在の日比谷駅のあたりにあった地上12階地下5階の有楽町ビルの2階で起きました。
昭和43年というのは、東京オリンピックから4年たち、世の中が第一次サウナブームに沸いていた頃のことです。
ブームに乗ってサウナ浴場が急増する中、有楽サウナ火災は、延焼の規模はそれほど大きくなかったにも関わらず、サウナ浴場独特の密室構造とたちこめる猛煙にはばまれ、3人の人命が失われる惨事となりました。
当時の記録を読み解いていくと、そこには多くの教訓が残されています。
https://www.bousaihaku.com/wp/wp-content/uploads/2017/03/a045.pdf
サウナヒーターの長期過熱による木造可燃物の極度の乾燥、120度の高温設定、離隔距離、内装材、断熱材、防煙・防火区画、火災報知器、避難誘導…このような事故の経験を踏まえて、現在の消防法、公衆浴場法、建築基準法、サウナ設備設置基準などの精度が高められていったのだろうと感じます。
法律や規制とは、多くの犠牲や痛みから生み出された先人たちの知恵であり、大切な遺産でもあるのです。
有楽サウナ火災から半世紀がたち、折しも世は再びサウナブームを迎えています。
これまでの常識にとらわれないサウナ施設がいま続々と登場しています。
新しいビジネスモデル、より高い顧客満足度にチャレンジするのは素晴らしいことですし、従来の法律や規制の枠では判断できないような試みがあるのも進歩のひとつの形でしょう。
しかし、自戒の念を込めて書きますが、人を無防備な裸にして滞在させる、命をあずかるビジネスが温浴施設です。しかも火災や感染症、薬品や電気ガスなど様々な危険要素がすぐ近くに存在しています。
温浴施設の開発や運営にすべての携わる人は、先人たちが残してきた教訓を軽視してはならないのです。脱法や規制逃れなどは、知恵でもノウハウでもありません。そんなことをもて囃す側にも責任があると思います。
ところでこの有楽サウナの資料を見ていて、もうひとつ気になったのは奇妙なレイアウトです。正確な寸法は分かりませんが、20坪もないような小規模サウナ施設だったようです。
そこに一般サウナ室と特別サウナ室。センターにエスカルゴのような形をした便所。こんな斬新なレイアウトは現代の常識では考えられないのですが、東京のど真ん中にあったこのサウナは、いったいどんな利用のされ方をしていたのでしょうか。
当時を知る人がいたら、ぜひ話を聞いてみたいものです。
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