◆入浴事故を防ぐには一人で入らないこと
一昨年に父を亡くし、続いて昨年母を亡くしました。二人とも80代後半で亡くなるまで自宅で暮らしたのですが、晩年は入浴にとても難儀していました。
そんな両親に対して、不肖の息子は毎日入浴介助してあげられるわけでもないのに「健康のために毎日風呂に入って」「風呂上りには水を浴びて」などと厳しいことを言い続けてしまい、思い出すと本当に申し訳ない気分になります。
湯に浸かっていたら浴槽から立ち上がれなくなり、呼び声に気づいた家族が救出したことも何度かありました。
自分で入った浴槽から立ち上がれなくなるというのも不思議に思いますが、足腰の筋力の衰えに加えて、手すりをつかんだり体重移動したりする関連動作も上手にできなくなってくると、浴槽から立ち上がれないということがあるのです。
そうこうしているうちに長時間が経過してしまえば、湯で体温が上がり過ぎて熱中症→意識障害→溺死となってしまうケースも少なくないことでしょう。
母が寝たきりになってからは、訪問入浴介護を利用して、自宅の居間に機械を運び込んで入浴させてもらうこともありました。浴室でなくても寝たままの人を入浴させることができるすごい機械でした。
高齢者の入浴というのは本当に難しい問題です。家族も行政もそれを支えるのは大変なことで、できることなら自分で問題なく入浴できる状態をいつまでも維持することが望ましいのです。そのためには、要介護になる以前の入浴習慣が大切と思います。
先日、ネットで「冬場の風呂での急死の原因は8割が溺死 体温が上がって熱中症を発症している可能性」というニュースが取り上げられていました。
https://news.nifty.com/article/item/neta/12280-956063/
そこでは
入浴関連の場所から119番を要請した4,593人のうち、亡くなったのは1,528人で、その8割近くが熱中症からの溺死
というデータを紹介しています。
これまで言われていたように温度変化による血圧の急変動で心筋梗塞や脳卒中になる、いわゆるヒートショックが入浴事故の主な原因と考えられてきたのですが、そうではなかったのです。
同じ調査で、
「温度差が危ない」のなら、露天風呂のような場所での事故が多くなるはずだが、4593件の入浴事故のうち、銭湯や温泉を含む「公衆浴場」での入浴による死亡事故の発生はわずか71件だった。
というデータも紹介されています。
これはうなづける話で、入浴事故の多くが熱中症からの溺死であるなら、他の利用者と一緒に入浴する温浴施設では様子がおかしい人は周りにすぐ分かるので、溺死に至る可能性は低いのです。
さらに温浴施設のスタッフは救命救急措置の知識があり、救急車を呼ぶ判断も早いので、上記のように公衆浴場での死亡事故は発生しにくいのです。
記事では、
入浴事故の一番の予防法は、「一人で入らないこと」と、鈴木医師は提案する。
「一人暮らしでご高齢の方は、公衆浴場を利用するといいのではないでしょうか。公衆浴場での入浴事故発生件数が少ないのは、“人の目”があり、具合の悪い人がいれば周囲が気づいて助け出されている可能性が高いと思います」
と提案されていて、ありがたいことと思いました。
ただし、医師への取材で書かれた記事のため、「湯温41度以下で10分以内が安全な入浴法。」という部分が強調されてしまい、それがあたかも誰にとっても正しい入浴法であるかのような印象に…
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