歴史は繰り返す

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今日は 2020年12月3日です。

歴史は繰り返す
 私がまだ20代でコンサルタント見習いだった頃、開発指導本部という部署に配属となり、長年大手量販店で出店戦略や店舗開発業務を担ってきた経験を持つ宮野雅俊さんという人の部下になって、2年くらいカバン持ちをやらせてもらいました。

不動産や建築、大型店舗開発に関する知識は、この時に宮野さんから得たものが大きく、後に温浴施設コンサルティングをするようになって非常に役立っています。

最近になって、宮野さんから教わった「近くて便利は永遠に強い」という言葉を思い出して、あらためてその意味を噛み締めています。

小売業における「近くて便利」とは、「最寄り購買」と呼ばれるもので、移動時間で言えば10分以内、日常の食品や生活必需品などを買い求める行動のこと。わざわざ遠くまで買いに行く「買い回り・準買い回り」「比較購買・目的購買」といった消費行動と区別されています。

いま私が温浴マーケティングで、小商圏とか近隣商圏と言っているのは最寄り購買と同じことで、移動時間10分圏内に十分な商圏人口さえあれば、商売は安定しやすいのです。

ではなぜ、最寄りの買い物を支えてきた商店街の八百屋さん、肉屋さん、魚屋さんといった一般商店がすたれてしまったでしょう。

それは「利便性」という価値において、コンビニエンスストアや食品スーパーマーケットに劣っていたからです。

距離の近さと、日常的に必要とする商品が売られているという点では、一般商店とコンビニ・スーパーはそう変わらないのですが、品揃えが幅広くワンストップで買い物が済ませられるかどうか、車をとめやすい駐車場があるか、何時から何時まで営業しているか、といった点で違いがあります。

魚屋さんではパンもトイレットペーパーも買えませんから、いくつもの商店を買い物して回らなければならず、不便なのです。

一般商店との競争に勝利したスーパーマーケットは、利便性を高めるために品揃えをさらに充実させていき、スーパーマーケット同士の競争がはじまります。新しい店は店舗面積がどんどん大型化し、やがて大型店は土地が安くて車で行きやすい郊外へと主戦場を移します。

その時点で「近くて便利」という重要な価値の一部を手放してしまっていたのですが、大型化競争は止まらず、さらに安売り合戦へ。結局ダイエー、西友、ヨーカ堂、ユニー、ニチイ…といった並み居る大手量販店は事業性を悪化させ、小売業界の主役は大商圏ではショッピングセンター、小商圏ではコンビニエンスストアへと移り変わります。

量販店の大型化競争、安売り競争の時代の真っ只中で活躍した宮野さんは、大型店舗開発を担いながら「近くて便利は永遠に強い」という本質を痛感していたのでしょう。

銭湯がすたれてしまったのも、魚しか売っていない魚屋さんと同じで…

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