環境負荷と温浴施設

湯どんぶり栄湯(台東区)の屋上にある太陽熱温水器。先進的です。

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今日は 2020年11月28日です。

環境負荷と温浴施設
 前回記事では、「浴槽とサウナ、環境に優しいのはどっち?」という視点から書き始めたつもりが、いつの間にか水光熱費比較の話になってしまいましたが、温浴施設が環境にどのような影響を与えているのかということは、今後の重要な視点になってくると考えています。

消費は企業への投票」という考え方があります。

例えば食器洗剤を選ぶ時に、価格が安くて洗浄力が強いけど環境負荷が大きい洗剤と、高くて洗浄力は弱めだけど、人体や環境に優しい洗剤。どちらを選ぶかというのは人それぞれでしょう。

性能が高くて価格が安ければ誰もがコスパでその商品を選ぶのかというと、そうでもないのです。

人によって価値観はそれぞれ異なり、資本主義的な価値観よりもオーガニックや持続可能性、フェアトレードなど、SDGs的な価値観を持つ人が急激に増えてきているのが今なのです。

あえてネガティブな言い方をすれば、温浴施設は湯水をじゃばじゃば使わせ、ガスや重油、電気をガンガン使って贅沢な入浴環境を提供しています。

多人数が共同で使うから、エコなのでは?という期待もあるのですが、1客あたり水光熱費にして200円から300円もかかっている施設が多いことを考えると、家庭で入浴するよりもエコとは到底言えません。

もちろん、入浴といっても身体を洗うだけではなく、心身のリフレッシュや美容健康増進といった別の目的で家庭よりもはるかに充実した入浴環境を提供しているのですから、単純に消費する水やエネルギーの量を比較してもあまり意味はないのですが、今後環境への配慮を求める機運がもっと高まってくれば、必ず気にする人が増えてくるはずです。

そういう意味では、単に収益性を向上させるための省エネ省コストという考え方だけではなく、環境負荷という点からも、温浴施設のあり方を考えていかなければならないのです。

前回記事で、浴槽とサウナの水光熱費比較をしましたが、浴槽を湯で満たすためには、ボイラーでガスや重油を燃やすことで二酸化炭素や大気汚染物質を排出しています。そして毎日何十トンもの湯水を使い、塩素を使い、それを排水しています。一方サウナはストーブの熱源としてガスや電気は使います。そして排出しているのはサウナ室から漏れる熱と、汗を含んだマットといったところです。どちらが環境に優しいのか、という視点からも考えてみる必要があります。

さらに言うと、温浴施設で使われる水やエネルギーは、単に消費量を抑えるというよりも、もっと循環再生されるようになっていくだろうと考えています。

技術的には排水を飲めるレベルまで浄化することや、断熱や排熱回収を徹底することは充分可能なのですが、現在の温浴施設の設備がそうなっていないのは、単独施設でそのような取り組みをすることが費用対効果的に合わなかったからです。

環境負荷に対する世の中の意識がもっと高まり、温浴施設も企業への投票という視点で選ばれるようになってくる。それに呼応して環境負荷低減に取り組もうとする温浴施設が増え、それに呼応してハイレベルな技術や設備が提供されるようになる。究極はゼロエミッション温浴施設の登場。

間違いなく、そんな時代がすぐ近くまで…

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