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今日は 2020年11月21日です。
◆魂のネーミング
かつて不可避な事情で温浴施設を廃業した企業が、あらためて施設を再建するお手伝いをしているのですが、ネーミングがなかなか決められずにいました。
元々の呼称とロゴデザインはあるのですが、それを再び使うのか、新たなネーミングとするべきなのか、社内の意見がまとまらず、仮称のまま計画が進んでいたのです。
一般公募や社内公募をやって、多くの候補案をじっくり見比べた上で決めてはどうかと申し上げていたのですが、それも踏ん切りがつかず、そうこうしているうちにサイン工事などの関係でデザイン決定しなければならないタイミングが迫ってきて、旧呼称のままでもいいじゃないか、という雰囲気になってきてしまいました。
時間切れで物事を決めるというのは、最善の経営判断をする機会を放棄していることと同じですので、最後にネーミング会議をやって、そこで決めましょうと進言しました。
私なりに様々な角度から良いと思うネーミング候補をいくつも考え、その案に至った理由や、旧呼称では不利であることを説明する資料も用意して会議に臨んだのですが、社長から最初に一言「ゼネコンにもう時間がないと言われ、変更すると費用もかかると言われたので旧呼称のままでいくことに決定してサインを発注しました。」と言われてしまいました。
これまで、ネーミングが事業の成功をブーストしたと実感する体験を何度もしてきている私としては、呆然とするしかない、残念な結末。
このことだけで売上がどれだけ変わる、と言えるものではありませんが、大切なチャンスをひとつ逃してしまった気がしたのです。
過去のメルマガ記事でも、温浴施設の優れたネーミングについては何度も書いてきているのですが、再び同じような残念なことが起きないよう、改めてここにまとめ直しておきます。
事業の成功をブーストする、優れたネーミングにはいくつかの共通条件があります。繁盛店に優れたネーミングを持つところが多いのは偶然ではないと考えています。
施設名称は広告代理店や設計事務所が考えてくれることも多いのですが、そうしたネーミングはたいてい無難で癒しのイメージを持つような耳ざわりの良い文字を並べただけのもので、経営理念やコンセプトをはっきり表現しているわけではなく、マーケティング的な狙いがあるわけでもありません。
優れたネーミングの条件について考えていきますと、
(1)読み易い
子供やお年寄りでも読める名称であること。無理な当て字や難読漢字、まだ充分に日本語化していない外国語など読みにくい名称はNG。
(2)言い易い
短くて発音しやすいということは、口コミにもなりやすいということ。「つるつる温泉」「かるまる」など同じ音の繰り返しは特に言い易い。世界一長い「じゅげむじゅげむ…温泉」があったらそれはそれで話題になるかも知れませんが。(笑)
温浴施設ではありませんが「PayPay」「ZOZO」も素晴らしく言い易いネーミングですね。
(3)憶え易い
よく数字や英単語を暗記するために他の言葉に関連づけて記憶する手法がありますが、元々人の頭の中にある言葉を使えば、常にそのイメージと連動するため記憶に残りやすくなります。
例えば「有馬温泉太閤の湯」は、秀吉が愛した有馬温泉という歴史的ストーリーがよく知られていますので、一発で記憶されるネーミングです。
(4)印象に残る
ちょっと高度なテクニックですが、普通の温浴施設らしくない名称は印象に残ります。「そらともり」「ほったらかし温泉」…名前を聞くといったいどんな施設なんだろう??とかえって想像をめぐらせてしまうパワーがあります。
(5)特徴やコンセプトを表現
施設の特徴やコンセプトを上手に言い表すことで魅力が伝わり、期待感を高めます。天然炭酸泉が売りの「ラムネ温泉」。ビル上層階にある男の隠れ家「天空のアジト マルシンスパ」。常夏のハワイが楽しめる「スパリゾートハワイアンズ」。現在まだオープンしていませんが、「ソロサウナtune」も非常に的確に業態とコンセプトが表現されており、注目を集めています。
(6)ネット検索に強い
いまや集客の大多数がスマホのネット検索経由で施設の存在を知る時代。そのためにはまず入力しやいこと。普段使われないため変換候補にあがってこない難しい漢字や、かな入力と英数字入力の切り替えが必要な名称などは面倒です。
また検索結果で同一名称や類似名称がないことも重要。自店の固有名詞で検索トップになれないのは、集客上とてもデメリットになります。
ちなみにGoogleなどの検索エンジンでは、多少の誤入力や読み間違いであれば親切に修正案を提示してくれますが、ニフティ温泉のサイト内検索の場合は、ひと文字でも違っていたら「!候補が見つかりません」と表示されてアウトになってしまうことがあります。読み難い、憶えられ難い、入力し難いネーミングはここでも不利になってしまうのです。
──このように書いても、すでに営業している施設の場合はこれまでマーケットに浸透させてきたネーミングですので、今から名称を変えるというのはすごく勇気がいると思います。施設を大改装するよりも難しいことかも知れません。
だからこそ…
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