三拍子揃った店

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今日は 2020年9月26日です。

三拍子揃った店
 その昔、私がまだコンサルタントとしても社会人としても駆け出しだったころに、ある飲食コンサルタントから聞かされた話がいまだに記憶に残っています。

その話は、「レストランは料理だけを提供しているのではない。料理とサービスと雰囲気。この3つを合わせたものがレストランの価値」といった主旨でした。別に格言的にキレイにまとまった言葉というわけでもなかったのですが、当時の自分の中でなぜかとても腑に落ちたことを覚えています。

料理自体にしても、単に美味しく味付けされた食材を出すというだけではなくて、その盛り付け方や量、温度、食器、ネーミング、組み合わせ、提供方法などによっても感じる価値が変わりますし、それをどんな雰囲気とサービスの中で楽しんでいただくのか、考えなければならないことはたくさんあるはずです。

ところが、世の中にはそう考えていない飲食店も多く、三拍子揃った店というのはなかなかありません。無愛想な店員、何の気遣いもないインテリア、丈夫で扱いやすい以外に取り柄のない食器…。そんな飲食店が原価の3倍の価格をつけて料理を出したところで、そのお金を払ってまたここで食事したいと思ってもらえるはずもないでしょう。

単に空腹や喉の渇きを満たしたいだけだったら、スーパーやコンビニで食材を買って来れば済むことで、自宅では簡単にはできないような素敵な食事時間を過ごしていただくために飲食店が存在する価値があるのです。

当たり前のことのようですが、三拍子そろっている飲食店が少ないのは、料理だけが商品だという誤解に起因していると思います。

これは温浴施設でも同じことで、ほとんどの家に風呂があるのですから、お客さまは身体を洗いに来ているわけではありません。単に身体を温めたり汗をかくためだけでもありません。

価値ある入浴時間。それは温浴設備や温泉の質といったことだけで決まるものではありません。それに加えて休憩時間や食事時間も含めて、飲食店よりもずっと長い時間、様々なことを体験しながら過ごしていただくわけですから、レストランの何倍も気を遣わなければならない、非常に難易度の高い商売だと思います。

昨日利用した日帰り温泉は、野趣あふれる建築や露天風呂の造園がとても素晴らしかったし、飲食メニューも健康食へのこだわりがあって好感が持てたのですが、サウナの運用が稚拙だったのと、スタッフが作業しているだけだったのが残念でした。

温浴施設のデザインや設備、備品、消耗品などのハード面に関しては、この半世紀でずいぶん進化したと思いますが、ハードとソフト、そしてハートまで揃った施設というのはなかなかありません。

逆に言えば、そこに成長の余地が大いに残されているということです。多額の投資をかけてハード面の整備をするばかりでなく、運営の見直しやスタッフの育成によっても施設全体の魅力をさらに高めることができるのですから、そこをもっと考え、手をかけていくべきなのです。

いまはなき大阪なんばのニュージャパンサウナが特異な存在だったのは、ハードだけを商品だと思っていなかったことにあると思います。むしろセラピストや運営スタッフこそが商売の中心にあると考え、設備や環境はその舞台装置であるという発想が、あの独特のサービスや雰囲気、そして飛びぬけた高客単価を生み出していたのでしょう。

どうしてもハード先行になりがちな温浴施設が変わるためには、三拍子揃えるというよりも、お客さまのご利用の流れに合わせてまずオペレーションやサービスを考える、つまりソフト面を先に決めるという発想の順序が必要なのではないかと感じています。

(望月)

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