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今日は 2020年9月2日です。
◆永遠に完成しない温浴施設
そのサウナは古い雑居ピルの上層階にありました。
2013年にリニューアルのご相談で電話をいただいたのてすが、都内の温浴施設であるにも関わらず、私はその存在自体を知りませんでした。
後日初めて現場を訪れた時は、すでに開業から27年経過とのことでかなり老朽化が進み、ひと言で言うと目も当てられない状態でした。
古びた施設は清潔感なく、設備はあちこち故障中。
常連客がたむろしてお互いをあだ名で呼び合い、新参者をよせつけない雰囲気。
狭い浴室に魅力的なアイテムはひとつもなし。
給水設備に故障があるのか、水風呂にはホースが突っ込まれ、水を出しっぱなし。
熱いだけのドライサウナはいつもすきま風の音がして熱を無駄に捨て続けている。
飲食コーナーで鶏唐揚げの注文が入れば、スタッフが近所のセブンイレブンにホットスナックの唐揚げを買いに行く。
数字を分析するまでもなく、客単価、人件費比率、1客あたり水光熱費、食材原価率などはすべて適性水準に程遠く、一方で広告宣伝費はほとんどかけておらず、何もしていないに等しい状況。
今のようにサウナイキタイなどの情報サイトもなかったので、雑誌に取り上げられることもなく、施設の存在自体が知られていませんでした。
何年も営業赤字が続いており、もはや廃業を待つばかりの場末のサウナとしか言いようのない施設でしたが、社長はリニューアルして続けたい意向です。しかも常連客は大事にしたいとか言うのです。
そこで、常連の人たちと一緒に酒を酌み交わしながら話を聞きました。元警視庁で桜田門の話が好きな「ご隠居」。大手IT企業の「富士通」。他にも司法書士とか、それぞれ立派な社会的地位のある人たちでした。
この人たちは、なぜこんなボロボロの施設に通い続けているのかという疑問。
常連客には、それぞれいろいろな理由がありました。熱いサウナが好きだから。いつも空いてて好き勝手にできて居心地がいいから。安く泊まれるから。俺はここで月に30万円使ってるんだ…。そして、「あんた、ここのコンサルするなら、俺たちの居場所をなくさないで」と頼まれました。
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