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今日は 2020年7月14日です。
◆地すべりの受け皿
コロナ禍によって、海外は欧米を中心に日本よりもかなり深刻な状況になっています。インバウンド市場は99.9%減となり、日本から海外への渡航も難しい状況です。
私自身もこの夏は久しぶりに海外出張の予定があったのですが、いま現地空港に到着するとタコ部屋で2週間隔離されるという話で、あえなく立ち消えとなりました。
2019年のインバウンド市場は訪日外国人3188万人(※1)、消費額4.8兆円(※2)。しかも訪日外国人のうち3割が温泉入浴を体験したいと思っており、実際に訪日した人が次回したいこととしては5割の人が温泉入浴を挙げていました。
日本から海外への旅行人数は年間延べ2000万人、消費額は約4.5兆円(※3)でしたから、インバウンドと合わせて9兆円以上のマーケットがほぼまるごと消滅するということになります。
ちなみに日本国内の温浴マーケットは付帯収入含めても2兆円足らず。9兆円の消滅というのがどれほど巨大な変動であるのか、想像を絶するものがあります。
2009年、リーマンショックによる経済危機が続く中で自社開催した「業績アップノウハウ大公開セミナー」で、最初に「余暇マーケットの地すべり」という話をしました。
当時も深刻な経済危機に見舞われていましたが、その動きをよく見ると単純に全体が縮小するということではなく、消費の向かう先が変わっていたのです。
観光消費の低迷は厳しいものでしたが、その中身は海外→国内、連泊→1泊、宿泊→日帰り、というように、より「安価」で「近場」、「短期間」な消費へとシフトしていたのです。そうするとより消費額と市場規模が大きい上位マーケットから下位マーケットへと消費が地すべりのように流れ込んでくることになります。
結果として、日常的レジャーの要素を含む温浴マーケットは経済の縮小と必ずしも連動せず、意外と健闘するだろうということを述べていました。
今振り返ってみると、2008年から2010年頃の温浴市場規模推移に同時期の日本経済ほどの激動は見られませんので、当時の読みは正解だったのだろうと思います。
このコロナ禍でも、海外旅行マーケットが失った4.5兆円は、単にすべてが消滅するのではなく、海外→国内、連泊→1泊、宿泊→日帰り、大商圏→小商圏と移動する可能性があります。さらに小商圏からの地すべりが巣ごもり消費と言えるかも知れません。
「安近短」という言葉は、消費が縮小してチープになるような印象を受けがちですが、では安かろう悪かろうで良いのかというとそれは逆です。
元々はアジアンリゾートでバカンスを楽しむ予定だった人が国内旅行に切り替える、あるいは温泉地で本格湯治や温泉旅館で贅沢三昧をする予定だった人が日帰り温泉に切り替えるということですから、むしろ要求水準は高いと考えるべきです。
本当は温泉地や温浴施設に行きたかった人が自宅入浴で我慢する代わりに、良い入浴剤を使いたがるということになるでしょう。
そう考えると、上位マーケットから来る地すべりの受け皿になるためには、よりハイグレード、ハイクオリティな商品
やサービスの提供が求められるということです。
株式会社温泉道場さんが運営するBIO-RESORT HOTEL&SPA O Park OGOSE(埼玉県入間郡越生町)では、東京ヘリポートからO Park OGOSへヘリコプターで片道約25分というプランを発表しました。価格は片道ヘリコプター体験+サウナスイート1泊2食付き60,200 円(一人あたり・税別)〜です。
http://onsendojo.com/wp/wp-content/uploads/2020/06/4a8bee04bdcdf89ab6100363744154df.pdf
このような狙いこそが、上位マーケットからの受け皿になるのです。飛行機で北海道か沖縄旅行でも行こうかと考えていた人たちのアンテナは、近場でもこんな非日常を楽しめるというプランに反応すると思います。
コロナ前に来てくれていた客層を早く取り戻さなければ!と割引販促に走るのは、すべり落ちていく既存マーケットを追いかけようとする方針であり、いまは効果の出にくいことをしている可能性があります。
(望月)
(※1 日本政府観光局(JNTO)報道発表資料)
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/200117_monthly.pdf
(※2 観光庁「訪日外国人消費動向調査」)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001345781.pdf
(※3 JTBグループ調べ)
https://press.jtbcorp.jp/jp/2019/12/2020-2.html