営業再開に向けて(19)〜手探りは続く

おふろ&サウナサミット5.14参加者のリアルタイムアンケート結果

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今日は 2020年5月18日です。

◆営業再開に向けて(19)〜手探りは続く
 全国的に営業再開する温浴施設が増えてきました。もうそろそろこの「営業再開に向けて」シリーズは役割を終えることになります。全国一斉休館がこれ以上長期化していたらどうしようもないので、ともかく経済活動が動き出して良かったです。

さて、前回のメルマガを公開ページに掲載する際、アイキャッチ画像に「温浴経営クイズ」を載せました。

その内容は、
【問1】
同じ温浴施設が、
A.入館料800円×客数300人/日
B.入館料600円×客数400人/日
という2つの営業方針(料金設定)を考えた時、いずれも入館料売上は24万円/日ですが、ABどちらの営業利益が大きくなると思いますか?

というものです。これを見て考えてくれた人は、たぶん「入館料売上が同じでも、客数が多い方が付帯部門が稼ぐのでBの方が儲かる」と思った人が多いのではないでしょうか。

ところが、現実はそう単純ではないのです。

ひとつは、付帯部門の運営力事情。飲食や物販、ボディケアなどの変動費型ビジネスが上手に運営できていて、入館料売上と同等かそれ以上の売上を作れているような施設であれば、入館料を安くして客数を増やした方が付帯部門収入がプラスになるのは間違いないのですが、複数の異業種をしっかりコントロールするのは非常に難しいことで、付帯部門がすべてハイレベルという温浴施設は少数派というのが現実です。

もうひとつは、同じ温浴施設が800円にしたり600円にしたりと価格だけを上下するのは難しいことで、実際の運営心理としては「高くするならもっとサービスレベルを向上させなきゃ」と考えるものです。結果として人件費が増えたり、リネンやアメニティを充実させたりして、コストが増えてしまいがちです。そうなると営業利益的にはマイナスに働いてしまう可能性があります。

また、入館料によって事前期待や客層が変化するというマーケティングの側面があります。入館料が高めの施設に対しては、「きっと良い施設だから思う存分楽しもう」と期待値が高くなり、その心理が食事やボディケアの利用率や単価を高めることにつながります。入館料が高い方が館内消費はより活発になるのです。また、高い料金を払える客層に変化するから、という面もあるでしょう。これらの要因によって、入館料が高い方が付帯部門は活発に利用される傾向があります。

さらに、600円と800円では予算帯が異なるので、集客傾向も変わってきます。600円は日常利用型の傾向で、800円の方が週末レジャーの性質が強まります。この変化に上手に対応できるかどうかも運営力によって違ってくるでしょう。

周辺の競合施設がどんな価格設定にしているのかによっても、地域の消費者の受け止め方は変わってくるでしょう。

このように、入館料を変更することはプラスにもマイナスにも複雑に作用するので、一概にAとBどちらが良いと言うことはできないのです。

ぜんぜんクイズになっていなくてすみません。

しかし、私がコンサルタントとして価格変更のアドバイスする時は、その施設のグレード感だけでなく、経費構造、運営力、客層、マーケット環境などをすべて把握した上で総合的な判断として進言します。そうでなければ簡単に口出しすることはできない難しい問題なのです。

 前回のメルマガで「当面はできるだけ正規料金で営業する方が良いだろう」と書いたのは、料金変更という複雑な問題に対して準備なく安易な値下げをしても、混乱を生んだり予想外の赤字増大になりかねないので、まずは落ち着いて正規料金でスタートし、様子を見ながら運営や販促の調整をしていく方が良いでしょう、という意味です。

先日のサミット5.14に参加していただいた施設の80%が縮小営業でスタートの意向。早く通常営業&販促バリバリの状態になるといいのですが、当面は手探りの状態が続きそうです。

(望月)

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