休業要請と温浴施設

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今日は 2020年4月11日です。

◆休業要請と温浴施設
 政府の緊急事態宣言を受け、4月10日に東京都が全国に先駆けて休業を要請する施設を発表しました。
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/007/661/2020041000.pdf

東京都の先行モデルは今後全国の自治体の対応に影響を与えるものと思いますので、この件と温浴施設の関係についてよく考えてみたいと思います。

ちょっと漢字多めの長文になりますが、大切なことですので我慢してお読みください。

 まず、基本的に休止を要請する施設として「遊興施設等」「運動、遊戯施設」が挙げられています。これらの中に温浴施設という表現はありませんが、不要不急であり濃厚接触や3密空間に該当する恐れがある業種ということで、ネットカフェ、漫画喫茶、カラオケボックス、ライブハウス、水泳場、スポーツクラブ、ゲームセンターがあり、温浴施設内にこれらに相当する部分が含まれている場合は、そのスペースを休止するといった配慮が求められると思われます。

さらに「商業施設」については、生活必需物資の小売関係等以外の店舗、生活必需サービス以外のサービス業を営む店舗で床面積の合計が1,000平方メートルを超えるものについても休止対象となります。1,000平方メートルというのは302.5坪ですから、ここでも多くの温浴施設が該当してくることになります。

一方で、「社会生活を維持する上で必要な施設」として、「飲食店」や「銭湯」は適切な感染防止対策の協力要請にとどまり、営業を継続しても良いことになっています。

ここで問題になるのは、温浴施設は複数の業種が複合しており、規模や業態がまちまちで定義がはっきりしていないため、自店が休業要請対象施設なのか、社会生活を維持する上で必要な施設なのか、判断が微妙ということです。

東京都の発表では「銭湯」という言葉が使われていますが、多くの温浴施設は「銭湯」ではなく、「その他公衆浴場」に分類されていますから、杓子定規に言えば社会生活を維持する上で必要な施設に該当しません。

これらのことを踏まえると、「浴場と飲食は適切な感染防止対策をとった上で営業継続し、それ以外のスペースは休止する。営業している面積は1,000平方メートル以下」といった柔軟な対応であれば理解を得られそうですが、何しろ前例のない事態ですから、行政に確認をとった方が良いでしょう。

明確に休止要請対象施設にされるのであれば、法に従って臨時休館となりますし、東京都の場合最大100万円とされる「感染拡大防止協力金」にも該当してくると思われますが、どっちつかずの扱いをされた挙句、休業せざるを得ないのに感染拡大防止協力金には該当しないとなったらまさに泣きっ面に蜂ですから、確認してハッキリさせておくべきなのです。

 次に雇用対策について考えてみます。

営業縮小や臨時休業による資金繰り悪化の中、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度として雇用調整助成金があります。この内容は、

・4月から6月末までを「緊急対応期間」として、助成率を中小企業では現在の3分の2から5分の4、大企業では2分の1から3分の2にそれぞれ引き上げる。

・さらに、解雇を行わない場合は、中小企業で10分の9、大企業で4分の3まで助成率を引き上げる。

・通常、雇用保険に6か月以上加入していることが条件となるが、今回はこの条件を撤廃し、加入期間が短い新入社員や、雇用保険に入っていないパートなどの非正規労働者も対象。
 
ということで、人件費支出の負担を軽減してくれるものです。ありがたい制度ですが、要件が複雑ですし、今問い合わせても窓口が混雑していてなかなか話が進められないといった問題があるようです。

そうこう言っている間にも次々と支払い日がやってきてしまいます。

4月8日に、「東京のタクシー会社が従業員600人を解雇」というニュースが流れました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200408/k10012375941000.html

外出自粛要請で売上が落ち込む中、休ませて休業手当を支払うより、解雇して雇用保険の失業給付を受けたほうがいいという判断だそうです。雇用調整助成金は上記のようなことですので、緊急事態の判断としては理解できることです。

ただし、失業保険を受給するためだけの目的で偽装的な解雇を行っているとしたら、不正受給にあたる可能性がありますので、明確に再雇用を約束することはできません。

会社都合退職の場合、自己都合退職よりも失業手当の支給時期が早く、また支給期間も長く設定されていますので、今後も従業員の生活を守りつつ、企業も生き残るためには会社都合の解雇を選択する企業が後を絶たないでしょう。

この方法をとる企業が急増すると、いずれ雇用保険制度が崩壊してしまうのかも知れませんが、終息が見えてこない中で、このまま待っていてもどうなるか分からないとなれば、プラスに働く可能性があることはすべて検討してみるしかないのです。

(望月)

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