長期戦の構え

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今日は 2020年4月1日です。

◆長期戦の構え
 今日から新年度です。通常であれば様々な行事があったりして新たなスタート、という気分ですから、新年度の抱負や前向きな展望を述べるところなのですが、今年はどうにも新年度にふさわしい話題がありません。

業績向上などの新しいネタもあるのですが、今それをお伝えしたところで、たぶん誰にも響かないんじゃないかと想像すると、筆が進まなくなるのです。

いま世の中の関心事は、「いつ緊急事態宣言が出るのか?」「このような状況がいつまで続くんだろう?」といったことばかりでしょう。

仕方なく、展望的な話を書くことにします。

(1)新コロ問題の今後
ここのところ、新コロ問題が長期戦になる可能性について触れていますが、これは年単位の長期戦になるおそれがあると考えています。

そう考える理由は、専門外ですので簡単に言うと、

・新型コロナウイルスの感染力は強く、感染自体をストップすることはできない。人類ができる最大の対抗手段は、経済活動を縮小減速させるとともに個々が感染拡大防止に気をつけることで、社会的に感染拡大スピードを抑え、危機を緩和すること。

・風邪やインフルエンザもまだ克服できていない人類が、医薬で新型コロナウイルスを短期のうちに制圧できると考えるのは楽観的過ぎる。

・この混乱が終息する時は、60%感染した時といわれる集団免疫形成によると考えるのが現実的。日本の人口の60%とは、76百万人。

・それがいつになるのか?というのは、上記の社会的緩和手段との見合い。政府は社会的緩和手段を強めたり弱めたりして、感染爆発防止(医療リソースの限界)と、社会活動のダメージのバランスをコントロールしようとする。

・医療リソースを人工呼吸器の数と見るか、感染症用病床数と見るか、すべての空き病床と見るか、いずれにしても感染者76百万人に対して致死率1%、その倍が重症者として仮に10日くらい入院するとしたら、計算してみると圧倒的に足りないのです。瀕死の重症者だけに医療リソースを振り切って、順番に対応したとしても、年単位の時間が必要となります。

・いずれ中国のように重症者以外はカウントしないようになり、人工呼吸器や病床を増やして必死に医療リソースを強化しても、落ち着くまでおそらく最低1年はかかるだろう、というのがざっくりとした捉え方です。

これは悲観的過ぎるシナリオかも知れません。清潔好きの、お風呂好きな日本人の生活習慣であったり、BCGの接種率などから、日本は外国のようなことにはならないのでは、といった楽観論もありますので、実際のところどうなるのかは分かりませんが、現在分かっている事実を積み重ねると、長期化の可能性が高いと思えるのです。

(2)問題の長期化を前提とした温浴施設の経営
 3月の業績は昨対でどのくらいだったでしょうか。三月前半と後半ではどう変わったでしょうか。各地の温浴施設に確認しているのですが、残念ながら今も業績好調というところはひとつもなく、営業を続けていたところでも1割から7割の減少となっています。

もしこのような状況が1年も続いたらどうなるのか。それを考えなければならないのが長期戦です。

今まで数えきれないほど温浴施設の経営診断をしてきましたが、固定的な支出が多いのが共通の事業特性です。人件費、水光熱費、不動産コスト、借入返済…。売上や客数の多寡に関わらず、毎月お金が出て行ってしまいます。休館しても固定費支払いは止まりません。

仮に、3月下旬の売上水準×12か月の損益予測シミュレーションをしてみてください。かなりの赤字が累積し、資金ショートになる企業が大半だと思います。

そんな状態がもっと長く続いてしまったら、普通の温浴企業はまず持ちこたえられません。廃業や会社清算を考えなくてはならない事態になってしまいます。

そうならないための備えを今から検討する必要があります。それは、通常は下がらないはずの固定費まで強引に引き下げる方法です。

・営業継続しつつも浴槽のうちいくつかを休止し、水光熱費を最小限にする

・スポーツジム、レストラン、休憩、仮眠など感染リスクの高いエリアを休止

・同時利用人数を制限(稼働させるロッカーや客席の間引き)

・営業時間を短縮

・上記縮小営業を前提に勤務する社員数を減らす(雇用調整助成金の活用)

・賃料減額や支払い猶予の交渉

・返済のリスケ

・運転資金の緊急借入

といった方策によって、廃業までどれだけ時間を稼げるのか?を確認するのです。

そうまでして営業を続ける意味があるのか、とも思いますが、施設の営業そのものを止めてしまって終息が想像以上に長期化したら、何の抵抗もできないまま廃業に追い込まれる可能性がありますから、この確認には重要な意味があります。

 なんとう新年度の始まりになってしまったのか、と暗い気持ちにもなりますが、嘆いていても仕方ありません。

覚悟を決めるというのは、最悪の結果をも想定した上で、勇気を出して前向きに動くことです。何もかもが最悪に向かうということはないでしょうから、どこかで必ず道が拓けていきます。覚悟がなければ、運命に翻弄されるだけなのです。

(望月)

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