全裸事件とユニバーサルデザイン

有料メルマガ「日刊アクトパスNEWS」会員の皆様

今日は 2021年3月16日です。

全裸事件とユニバーサルデザイン
 以前現場運営をしていた時、数ヵ月に1回くらいのペースで全裸事件が起きていました。

全裸事件というのは、風呂に入るために脱衣室で服を脱いだ人が、浴室に向かうつもりで、間違って全裸で通路に出てしまうことです。

通常、通路から脱衣室に向かう動線は暖簾で仕切られ、脱衣室内が見通せないようにクランクになっています。

一方脱衣室と浴室は湿度の高い浴室と仕切るための扉があったり、浴室の水滴を脱衣室に持ち込まないための前室があるなど、明らかに違う造りになっているため、間違うことはないと思うのですが、極度の方向音痴の人や、お年寄りなどが時折やってしまうのです。

そういう人を発見した時は、スタッフはあわててタオルで身体を覆いなから、脱衣室に連れて行ってあげる必要があります。

先週、1日に何件もの温浴施設を巡る調査をしているときに、あるスーパー銭湯に入館して脱衣室で服を脱ぎ、さぁ入浴と思ったら、何故か通路に立っている自分がいました。

人は想定外のことが起きたとき、自分に何が起きたのか理解するまでの数秒間、ポカンと立ち尽くしてしまうようです。

ようやく事態を理解して、あわてて脱衣室に戻ったのですが、まさか自分が全裸事件をやらかすとは思っていなかったのでショックでした。

考えてみると、その温浴施設は暖簾はかかっているものの、通路から脱衣室への動線がクランクになっておらず、代わりにアルミ製のドアがありました。脱衣室側から見ると、浴室に向かう動線と区別がつきにくいのです。

とは言え、普通はドアを開けた時の暖簾に気づくはずなのですが、調査に気をとられていたせいか、無意識に暖簾をくぐってしまったようです。

いくら温浴施設のプロを自認していても、寄る年波には勝てぬということなのでしょうか。困ったことです。

しかし、自分が経験してみて、間違ってしまうお客さまの気持ちが理解できたような気がしました。

温浴施設は多様な客層が利用する業態です。中には子供からお年寄り、酔っている人、考え事をしている人など様々な人がいますので、誰もが注意深く施設の造りを観察して、迷わず利用できるとは限りません。

年齢や国籍、能力、状況などにかかわらず、どんな人でも戸惑ったりすることなく快適に利用できるように考えられたデザインのことを「ユニバーサルデザイン」と言います。障がい者や高齢者だけを対象にしていない点で「バリアフリー」とは異なる概念です。

ユニバーサルデザインの7原則という考え方があります。

1.どんな人でも公平に使えること。
(Equitable use / 公平な利用)
2.使う上での柔軟性があること。
(Flexibility in use / 利用における柔軟性)
3.使い方が簡単で自明であること。
(Simple and intuitive / 単純で直感的な利用)
4.必要な情報がすぐに分かること。
(Perceptible information / 認知できる情報)
5.簡単なミスが危険につながらないこと。
(Tolerance for error / うっかりミスの許容)
6.身体への過度な負担を必要としないこと。
(Low physical effort / 少ない身体的な努力)
7.利用のための十分な大きさと空間が確保されていること。
(Size and space for approach and use / 接近や利用のためのサイズと空間)

※ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターによる

建築デザインや浴室に限ったことではなく、温浴施設のありとあらゆるところで、この考え方は必要と考えます。

多様化の時代であり、高齢化も進むこれからは…

---------
この記事は会員限定公開となっており、全文は表示されておりません。

メールマガジン「日刊アクトパスNEWS」をご購読いただくと、毎日全文がメールで届きます。

メールマガジンご購読のご案内はコチラです。

Share this...
Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter